研究課題/領域番号 |
23612006
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
板橋 岳志 早稲田大学, 理工学術院, 講師 (20434384)
|
キーワード | 紡錘体 / 細胞分裂 |
研究概要 |
紡錘体の伸長によって、染色体が娘細胞に正確に分配される有糸分裂後期の制御メカニズムは、多くの分子の分子生物学的同定や、細胞生物学的な観察に基づく分子機構の予測を中心に研究されてきた。本研究では、染色体分配機構における“紡錘体が発生する力”を、MEMS力センサー法などの生物物理学的手法を加味することによって定量化し、時間的・空間的に解析する。また、その力を発生するモータータンパク質類のそれぞれの寄与の程度を定量化する。これにより、有糸分裂後期から細胞質分裂にいたる“力”の役割を反映した染色体分配制御モデルを構築することを目的とする。 昨年度、有糸分裂後期のHeLa細胞(癌細胞)において、染色体分配を開始した後の紡錘体の伸長や分裂溝陥入による、細胞変形に伴って発生する力を定量的に計測することに成功した。本年度は、力発生と細胞分裂動態の関係をより詳細に解析した。そこで、アクチン線維、微小管、染色体、中心体と動原体のマーカータンパク質全てを、数種の蛍光タンパク質との融合タンパク質として恒常的に発現する、正常細胞由来の株を樹立した。この細胞株を用いることによって、HeLa細胞と正常細胞における細胞分裂動態の違い、計測された力の発生源の違いや、紡錘体伸長の度合いと発生力の関係等について、新たな知見が得られた。 また、昨年度確立した力計測方法に加え、力計測・顕微観察結果の精度向上を目的とし、効率的かつ高精度に力を計測するために、顕微鏡下で細胞内の紡錘体軸を規定するマイクロプリンティング技術を導入した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた実施目的の“計測された力を発生するモータータンパク質類のそれぞれの寄与の程度の定量化”について、力発生の候補因子を特定し、寄与の程度の定量化を進行しつつあり、研究内容を順調に達成している。
|
今後の研究の推進方策 |
外部負荷に対する紡錘体伸長と細胞質分裂の応答解析を、現在得られている結果を発展させながら、計画通りに推進する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、得られた研究成果の重要性を考慮して、海外での成果発表を控えたため、次年度への繰越研究費が生じた。次年度は、研究計画通りに研究費を使用する予定であり、加えて国内外での成果発表・発信を積極的に行う予定である。
|