研究概要 |
脱膜したマルハナバチ飛翔筋線維をカルシウムで活性化し、伸張したときにX線回折像中に最初に現れる変化は第1層線上の1,1反射スポットの増強であり、これが昆虫飛翔筋の高速振動にとって重要な「伸張による活性化」の引き金となる構造変化を反映している可能性が高い。この考えが正しければ、「伸張による活性化」を示す他の昆虫種の飛翔筋も伸張時に同様の回折像変化を示すと期待される。そこで今回、タガメとガガンボの2種の昆虫の飛翔筋を用いて同様の回折実験を行なった。その結果、この2種の昆虫の場合も伸張時に第1層線上の1,1反射スポットが増強することが明らかになった。特にガガンボの場合、反射スポットの増強は顕著であった。従って1,1反射スポットの増強は、「伸張による活性化」を示す昆虫の飛翔筋に普遍的な現象であると考えられる。 また、予定通り生きたマルハナバチを用い、羽ばたき中の飛翔筋からの回折像と羽の動きを同時記録した。これによりマルハナバチの胸部にある2種の拮抗する飛翔筋の動作タイミングを記録できたばかりでなく、回折像より筋肉長、発生張力、ミオシン頭部の結合解離などの時間経過を克明に記録することができた。何よりも重要なのは上記の1,1反射スポットの増強は生きた昆虫の飛翔筋においても起こっており、その強度変化は脱膜した標本の場合より顕著であることが明らかとなったことである。この1,1反射スポットの増強はアクチンに結合したミオシン頭部が伸張時に特定の構造変化を起こすことで説明できる。この成果について現在論文投稿中である。
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