研究課題/領域番号 |
23613004
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
福嶋 義光 信州大学, 医学部, 教授 (70273084)
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研究分担者 |
櫻井 晃洋 信州大学, 医学部, 准教授 (70262706)
涌井 敬子 信州大学, 医学部, 助教 (50324249)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | パーソナルゲノム / 遺伝学的検査 / 遺伝カウンセリング / 次世代シークエンサー / マイクロアレイ染色体検査 / 遺伝子診断ビジネス |
研究概要 |
パーソナルゲノム解析の生命倫理課題,有用性の評価法,精度管理,啓発・教育方法,情報提供のあり方等について,検討するために、今年度は,下記の取り組みを行った。1.英国NHSのUKGTN (UK Genetic Testing Network) の報告書「遺伝サービスの委託取り決めに関するレビューおよび戦略の提言」の翻訳および検討:英国においては、大学・研究機関を中心とする遺伝子解析機関がネットワークを作り、臨床的意義がある遺伝学的検査に対応している。遺伝学的検査は臨床遺伝の専門医によって委託され、検査費用は、委託した医療機関が負担する。その結果、質、効率、費用効果が高い遺伝学的検査サービスを患者に提供することが可能となっている。2.国際人類遺伝学会(2011.10.12-15、モントリオール)への参加および情報収集:次世代シークエンサーおよびマイクロアレイ解析など、網羅的にヒトゲノムを解析する技術が生まれ、これらの技術が研究から診療へと急速に導入されている。本学会では個人の全ゲノム情報が容易に得られる時代を迎え、個人の自律と血縁者の保護の問題が提起されていた。欧米においては、研究での利用については、従来どおり、十分な情報提供を行った上でのICの取得で対応しているが、診療においては、予期しない情報の取り扱いなどを定めた別枠の対応策が考えられている。3.班会議の開催(2012.1.7):研究代表者、分担者、および協力者が集い、わが国における問題点の整理を行うとともに、具体的な対応方法を検討した。その成果の一つとして、研究代表者および協力者が関与し、日本医学会に「遺伝子・健康・社会」検討委員会が設立された。同委員会は、2012.3.1に、「拡がる遺伝子検査市場への重大な懸念表明」について記者会見を行い、この問題は、2012.3.28の参議院厚生労働委員会でも取り上げられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
米国および英国におけるパーソナルゲノム時代を迎えての取り組みについて、現時点では、十分な情報を集めることができた。しかし、この領域は日進月歩であり、これからも継続して、情報収集に努める必要がある。研究代表者、分担者、協力者による検討を基礎に、日本医学会に「遺伝子・健康・社会」検討委員会が設立され、遺伝子診断ビジネスの問題点について、日本医学会から懸念が表明され、国会でも取り上げられたことは、当初の計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.パーソナルゲノム解析の生命倫理課題:継続して、諸外国の取組みに関する情報を収集するとともに、,わが国の文化,社会にパーソナルゲノム解析技術を導入するための課題を整理する。2.パーソナルゲノム解析の有用性の評価法の検討:諸外国の取組みを参考としつつ,1)浸透率の高い単一遺伝子疾患の診断・スクリーニング,2)多因子病のリスク判定,3)罹患者の予後予測,4)薬物の効果予測・副作用予測,5)ビジネスとして提供される遺伝子解析,の5分野ごとに評価に必要な項目を提案する。3.遺伝子診断ビジネスの実態調査:2.で提案した評価法に基づき,ビジネスとして提供される遺伝子解析について,集めた情報に基づき有用性を評価する。4.遺伝学的検査法の精度管理:諸外国の取組みを参考としつつ,分子遺伝学的検査,細胞遺伝学的検査,マイクロアレイ染色体検査など,それぞれの検査の精度管理に必要な項目のうち,わが国では,まだ準備されていないものを明らかにし、関連学会・団体と協同で,人材養成など,遺伝学的検査法の精度管理に必要な体制整備を開始する。5.啓発・教育方法,情報提供のあり方:諸外国の取組みを参考としつつ,わが国の一般社会に受け入れられやすい啓発・教育のためのコンテンツを作成し、公開する。6.パーソナルゲノム時代の生命・医療倫理の深化と社会との接点に関する検討:シンポジウム・市民公開講座を開催し,本研究成果を関連学会関係者および一般市民に開示し,助言を受ける。本研究の成果物を関連学会と連携し,継続して公表できる形でホームページ上に掲載する.さらに,本研究班で作成した提案を国,学会,関連団体等にはたきかけ,課題解決に結びつける。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際的な状況に関する情報収集のために、欧州人類遺伝学会、米国人類遺伝学会等に参加する(海外旅費)。海外文献の翻訳を継続して行う(委託費)。研究代表者、分担者、協力者が集う班会議を開催する(会議費、旅費)。遺伝子診断ビジネスの実態調査を行う(調査費)。教育コンテンツを作成する(印刷費)、等。当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため,次年度使用額が生じた.
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