本研究の目的は,ヒト胚研究規制の制度化にあたってどのような視座または視点が必要とされているのか,とくにわが国におけるその種の規範形成においてどのような原理原則を採用することが望ましいのかを理論的かつ実証的に探究することにある。 それを具体化する研究目的としては,第一に,生命倫理規範形成で先行してきた欧米型の生命倫理規範の構成原理および特質とその限界とを析出すること,第二に,倫理規範を法制度化すること伴う固有の問題を析出し,法制度化の限界と効用を明確化すること,第三に,ヒト胚研究規制において欧米型の生命倫理規範(特にそのヒト胚観)が普遍的な規範たり得るかという問題を解明することである。 2011年度にすでに,具体的な研究目的の第一にあげた「欧米型生命倫理規範の構成原理および特質と限界」,および具体的研究目的の第二にあげた「倫理規範の法制度化に伴う諸問題,とくに法制度化の限界と効用」についての基礎的な探究をおこない,2012年度には,それら基礎的研究を確認する方向での研究をおこなうと共に,海外の研究者との意見交換を行った。 2013年度には,欧米型生命倫理規範の構成原理および特質を,臨床倫理に関する具体的なケーススタディで探究すると共に,研究倫理の構築と臨床倫理との関係という新たな視座から,欧米型生命倫理規範の特質を捉え直すという方向で研究を進展させた。また,釧路で開催された生命倫理国際シンポに参加し,内外の研究者との意見交換を進めた。
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