研究課題/領域番号 |
23613007
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
吉川 ひろみ 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (00191560)
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研究分担者 |
吉畑 博代 県立広島大学, 保健福祉学部, 教授 (20280208)
古山 千佳子 県立広島大学, 保健福祉学部, 准教授 (90280205)
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キーワード | 国際研究者交流 |
研究概要 |
本研究の目的は,リハビリテーション専門職のための倫理に関する教育プログラムを提案し,その効果を明らかにすることである。平成23年度は,リハビリテーション専門職に身近な倫理事例の収集を行い,平成24年度は,リハビリテーション分野における倫理事例を掲載した教材を開発し,平成25年度の教材使用に備えた。 平成24年度の教材開発のための活動は,①日本作業療法教育研究会での研究経過報告と意見交換,②倫理教育手法としてのプレイバックシアター活用の可能性の探究,③海外講師招聘を含む倫理セミナーの開催,④リハビリテーション倫理事例集の発行,であった。日本作業療法教育学術集会の参加者から,本研究に協力したいという申し出があった。プレイバックシアターでは,学生の臨床実習での体験が語られ演じられるという演習を実施することができ,自身の省察と集団としての共感の育成が得られ,倫理教育手法としての可能性が示唆された。2013年1月11,12日に,倫理セミナーを開催し,現場の療法士,教員,学生約90名が参加した。カナダの作業療法士であり,カナダ作業療法士協会発行の「倫理的作業療法実践の枠組み」の著者であるRon Dick氏の講演や,グループによる事例検討を行った。英文献から作成されたリハビリテーション倫理事例に,現場の専門職が経験した事例を追加し,倫理原則,倫理理論,倫理的問題の分析法を記載した「リハビリテーション倫理事例集」を作成し,300冊(A4サイズ50ページ)印刷した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である教材開発は,「リハビリテーション倫理事例集」(以下,事例集)の印刷によりほぼ達成できた。申請書では,平成24年度に教材試用までを計画していた。事例集の一部は,倫理セミナーのグループでの事例検討に使用したり,本学の教員と学生の有志で開催している倫理研究会で,教材としての活用法を探った。この経験をもとに,事例集では,倫理原則や倫理理論を具体事例を絡めて説明した。さらに,倫理セミナーに招聘した「倫理的作業療法実践のカナダ枠組み」の著者であるRon Dickが提唱する分析法,Albert Jonsenによる4分割法,アメリカの理学療法士Ruth Purtiloが示す6段階モデルについても,事例を使って分析法を記載した。 倫理的視点からリハビリテーション専門職の思考と実践の架け橋となることを目的として,事例集を作成した。事例集の一部を使用した倫理セミナーや倫理研究会参加者の発言や終了時アンケートから,倫理的感受性の高まりが推察された。倫理セミナーでは,Ron Dickが,倫理は生活のすべてに関連すると述べたことを,終了時アンケートに記載した参加者が多かった。McMaster大学における倫理教育の経験から,倫理学習の初期には,学生は倫理的問題にほとんど気づかないが,高学年になるに従い,多くの倫理的問題をあげるようになったという経験を知り,次年度実施する研修成果を知るための一つの指標がとなるかもしれないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度に印刷した事例集を使用し,リハビリテーション専門職の倫理研修を開催する。倫理的視点からリハビリテーション専門職行動を省察する人たちのネットワークを構築するためにインターネットを活用する。プレイバックシアターなど,倫理教育に有効な手法について探究を続ける。
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次年度の研究費の使用計画 |
リハビリテーション専門職の倫理研修のために必要な旅費,研修を有意義に進めるための講師やファシリテータの謝金が必要である。研究成果の公開にかかるホームページ作成委託費用が必要である。研究報告書の作成のための印刷費と郵送費が必要である。研究成果発表のための学会参加費と旅費が必要である。
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