研究課題/領域番号 |
23614003
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
池ノ上 真一 北海道大学, 観光学高等研究センター, 特任助教 (60582252)
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研究分担者 |
田代 亜紀子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, アソシエイトフェロー (50443148)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ツーリズム / 観光 / 文化遺産 / 国際情報交換 / 地域計画 / 地域社会 / 生活スタイル / インドネシア |
研究概要 |
1年目は、当研究が目的とするヘリテージツーリズムの思想の明確化と方法論の確立のため、研究事例地および比較事例地を選定する基準の明確化に取り組んだ。特に、(1)ヘリテージと暮らしとの乖離状況、(2)ヘリテージとの関連主体の状況、(3)ヘリテージツーリズムの開発状況に着目した。 具体的には、北海道内(札幌市、留萌市、函館市、知内町)、盛岡市、一関市、気仙沼市、京都市、福岡市、佐世保市において現地踏査を行った。また海外事例ではインドネシアを対象地とし、パダンを中心とした西スマトラ地域と、ボロブドゥールを中心とした中部ジャワ地域で調査を行った。さらに札幌市、留萌市、知内町、インドネシア各地域については、地域の行政、市民、民間企業、公益組織といった各セクターを中心にインタビューを行い、具体の方策についての情報交流をした。 結果として、地域の成立に係わった生業とそれに基づく社会システムが、地域外部の変化に対し、いかに対応する仕組みがあるか、また実際にその対応が行われているかが重要であることが明らかになった。特に当研究では、ツーリズム活用の場合のみに着目したところ、それにともなう地域外部からの影響を、いかに地域にとって有効な力とするかという地域の総合的な能力が重要と想定される。この能力の解読と課題抽出が、地域におけるヘリテージツーリズム開発の研究にとって重要なプロセスと言える。さらに多民族国家であり、また様々な文明の交流点といえるインドネシアでは、民族や宗教や国家などといった地域社会を規定する枠組みが、ヘリテージツーリズム開発において重要視すべき因子であることが分かった。すなわち、ツーリズムを活用するということは、地域社会にとっていかなる方針で今後の地域を経営するか、また住民の生活スタイルをどう形成していくかといったことに深く関わっていることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内事例地については、現地踏査を様々な機会を活用したことで多様な地域において行うことが出来たとともに、実際の地域での関連する取り組みへの参画機会を得ることができたことから、関係者との情報交流により深い情報収集と得られた知見の検証が可能となった。また、海外事例調査として、インドネシア国内でも違う民族が居住する地域、歴史的に宗教が混在した地域、オランダ植民地時代に形成された地域などを対象にしたことで、日本国内では得られ難いツーリズムと地域社会との関係に関する知見が得られ、より充実した調査成果を得ることができた。 しかし一方で、当初の研究計画において挙げていた対象地・白老町への訪問・参画の機会を得ることができておらず、事例対象地について見直しが必要である。また、ヘリテージツーリズムを捉えるためのフレームワークについて、明確化には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
前年度から持ち越した事例対象地の確定、ヘリテージツーリズムを捉えるためのフレームワークの抽出を行うため、これまでの研究成果に加え、国内および国外の比較事例地の現地踏査を実施し、研究代表者と研究分担者とが議論する場を必要に応じて積極的に設ける。 また、当初からの研究計画としていた事例対象地における具体の取り組みをとおした調査研究をすすめ、地域の関係者や適切な専門家らと議論をすすめることで、ヘリテージツーリズムの思想の明確化に取り組むとともに、地域における住民の暮らしの質の向上および持続性、循環性といった地域の営みの連続性の確保に資するヘリテージツーリズムの方法論の確立を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
事例対象地の確定、ヘリテージツーリズム把握のフレームワーク抽出のため、前年度に引き続き国内調査を中心に行う予定である。一方で、国内調査だけでは得がたい知見を得るため、海外調査についても2回程度実施する予定である。以上から、主に旅費支出が中心となる予定である。 また、平成23度に予定していた研究打合せについて、科研費の支給状況が不確定だったことから予定回数を減少させて実施した。そこで次年度では、打合せ回数を増やすことで、不十分であった調査研究に関する議論や打合せを充実させることとする。 さらに、次年度は研究成果のまとめ、学会等での発表や関係者との議論にも取り組む予定であり、そのための旅費、学会への論文投稿費用、既往文献の購入費等の研究論文の作成に関連した支出を予定している。
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