研究課題/領域番号 |
23614003
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
池ノ上 真一 北海道大学, 観光学高等研究センター, 特任助教 (60582252)
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研究分担者 |
田代 亜紀子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, アソシエイトフェロー (50443148)
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キーワード | ツーリズム / 観光 / 文化遺産 / 国際情報交換 / 地域研究 / 地域計画 / 生業 / 社会システム |
研究概要 |
2年目は、前年度に行った事例対象地の選定、あるいは変更のための検討の結果として、「尾道市および瀬戸内地域」と「気仙沼内湾地区および関連地域」を事例対象地とすることを決定した。それに伴い、両地域において、具体的なフィールドワークを展開した。その調査研究の枠組みとして、(1)地域構造(交流基盤、生活基盤)の分析、(2)ヘリテージツーリズムの現状調査(社会的なしくみ(経済システムを含む)、地域構造との関係)、(3)地域課題の抽出、を用いることとした。 また、比較事例調査として、国内では、北海道内(札幌市、留萌市等)、京都市、沖縄県(竹富島)における現地踏査を行った。また海外では、タイ(バンコク、アユタヤ)、カンボジア(シェムリアップ)を対象とした現地踏査を行った。とくに、地域特性に着目しながら、ヘリテージツーリズムの現状調査を中心に行い、地域課題との関係に着目した。また、研究代表者がこれまでに取り組んできた沖縄県・竹富島を対象とする研究を、ヘリテージツーリズムを前提とした観点から捉え直すことで、地域課題の解決に資する新たな社会的なしくみの構築のために、文化遺産は有効な地域の資産であることを明確にした。 結果としては、前述したとおり、当該研究における事例対象地を明確にすることができたこと、さらに昨年度、地域の特性を規定していると想定した生業、社会システムについて、外部地域との交流を前提とした捉え方としたことで、交流基盤と生活基盤といった観点から地域構造を説明できるという仮説に辿り着いた。また地域の文化遺産を今後の地域社会の発展のための資産として捉えることで、ヘリテージツーリズムが地域課題の解決のために用いることができる可能性について言及した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目は主な事例対象地を決定するために、昨年度実施ができなかった北海道白老町を含め、研究計画の再確認、および見直しを行った。とくに当該研究は、その「研究の目的」において「地域づくりの発展に資する」と謳ったとおり、研究成果が地域社会に還元することが目的である。そのため、いかに地域情報の取得できるか、あるいはいかに地域社会と関係構築ができるかという観点から事例対象地の絞り込み、および変更を行った。そのことにより、1年目に広く多様な特性が見られる地域にて行った現地踏査の結果を反映し、当該研究を進めることが出来たと言える。 また、当該研究を進めるにあたり用いるフレームワークとして、地域にとってのヘリテージツーリズムの意義を明らかにするための取り組みを行った。とくに地域課題の解決を目的として、いかにしてツーリズム・インパクトを同化するかに視点を絞ることで、当該研究におけるヘリテージツーリズムの捉え方を明確にすることができた。そのため、今後実施予定の地域における具体的な課題の解決を前提としたヘリテージツーリズムのあり方を探るための第一歩となると言える。また、北海道大学にて開催された公開講座や、事例対象地である気仙沼市役所にて開催された活動報告会といった公開の場や、雑誌(「13.研究発表」にて後述)をとおした研究成果の発表、あるいは新聞や一般雑誌(AERA 2013.1.28発売号)等の取材協力をとおした研究活動の公表や普及を行った。以上をとおして、研究分担者はもちろんのこと、多くの研究者や地域住民との議論を行い、研究成果の確認、見直しを行った。 しかし、訪問者にとってヘリテージツーリズムがいかなるものであるかについての言及は行っておらず、今後の研究課題として残されている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに事例対象地、研究のフレームワークを明確にしてきたことから、今後は具体的な現地での調査を実施する。さらに、調査結果を用いたヘリテージツーリズムの思想の明確化と方法論を抽出するための作業が必要である。また、当該研究の最終年度であることから、研究成果を論文あるいは著書としてまとめるための作業を行う。 そのためには、2年目同様に、研究分担者はもちろんのこと、関係する研究者、あるいは地域住民との議論をとおして、研究成果の確認作業を行うことを予定している。とくに専門家との議論、学会や研究会での発表等をとおして、学術的な成果としてまとめることに主眼を置く。
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次年度の研究費の使用計画 |
より詳細な地域調査を行うため、決定した事例対象地を中心に調査分析を行う予定である。また、研究成果を学術的にまとめるために、適切な地域において比較事例調査を複数回にわたり行う予定である。さらに、調査分析の成果に関する議論や打合せの回数を増加させるとともに、学会や研究会等での発表や専門家との議論の機会を設けることとする。とくに2年目は、予定していた学会での発表機会を設けることができなかったことから、学会に相当する複数の研究者が参加する場での発表機会を設けることを予定している。 以上から、主に旅費支出を中心に研究費を使用する計画である。また、学会への論文投稿費用、既往文献や資料の購入費、論文の印刷費用といった研究成果のまとめと発信に関連した支出を予定している。 また24年度未使用額の発生理由としては、予定していた調査旅費が安価であったためである。そこでその未使用額については、25年度において、調査旅費に追加して使用する予定である。
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