本研究は,我が国最大の森林レクリエーション資源の供給源である国有林野において「レクリエーションの森(以下,レク森)」を中心に展開されてきた森林空間総合利用事業(以下,森林レク事業)に焦点を当て,地元自治体や市民,企業等との多様なパートナーシップ形成による新たな管理運営体制の構築に向けた取組の実態を調査し,これらが利用者へのサービスや国有林野事業等にどのような影響を与えているのかを明らかにすることを目的として行った。その結果,以下のことが明らかになった。 (1)いわゆる「抜本的改革」以降,森レク事業は,「国民参加の森林づくり」とともに,「開かれた『国民の森林』」の実現へのモデル的な取組として位置づけられてきた。また2005年からは「量的充足」から「質的向上」の重視への転換を基本的な方針として「レクリエーションの森リフレッシュ対策」をスタートさせた。 (2)この間の取組として最も進捗が見られたのは,レク森の区域設定見直しである。地域管理経営計画の策定に合わせて順次行われ,各森林管理局管内でほぼ一巡している。 (3)しかしながら,地元自治体を核とした「協議会」方式の再整備,「サポーター制度」の創設,利用者の体験を重視した計画内容の充実等については,各森林管理局ともに限定的なものに留まっている。その要因としては,市町村合併により地元自治体の範囲が拡大し,国有林野事業との関係性が相対的に薄れてしまったことが影響している。また,利用者の体験を重視した取組については,国および地方双方の財政問題などから全体的にはほとんど進められていないが,地元自治体や市民団体との連携が比較的良好な場所については,充実がみられるケースも存在している。こうした先進的な取組においては,レク森の活用が地域づくり構想の中に位置づけられているのが特徴的である。この点は今後の国有林野の管理のあり方を考える上でも示唆的である。
|