研究課題/領域番号 |
23614009
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研究機関 | 和歌山大学 |
研究代表者 |
藤田 武弘 和歌山大学, 観光学部, 教授 (70244663)
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研究分担者 |
大浦 由美 和歌山大学, 観光学部, 准教授 (80252279)
大西 敏夫 和歌山大学, 経済学部, 教授 (90233212)
内藤 重之 琉球大学, 農学部, 准教授 (30333397)
李 只香 九州共立大学, 経済学部, 教授 (80309731)
八島 雄士 九州共立大学, 経済学部, 准教授 (00320127)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 都市と農村(韓国) / CSR(日本・韓国) / 企業の森(日本) |
研究概要 |
企業のCSR事業の一つとして注目を集める和歌山県「企業の森」事業に参加する53社にアンケート調査を実施し,事業体におけるCSR活動の位置づけ,事業参加の目的や経緯,活動実績(森づくりイベントの内容など),地域との交流活動の有無,問題点および今後の課題に関する分析を行った。その結果,「企業の森」事業への評価は概ね好評で,とりわけ県行政や森林組合のサポート体制が充実していることが高く評価された。また,多くの企業が現地での森づくりイベントを年1回以上開催しており,加えて地域との交流機会を重視していることが分かった。さらに,社員・構成員の研修教育や交流の場としての位置付けや,顧客や取引先など当該企業の業務に直接関わるステークホルダーとの交流の場としても重要視している姿が浮き彫りとなった。また,イベント開催時における現地業者からの食事・食材の調達,現地交通機関の利用,地元の物産販売所や温泉施設への立ち寄りなど,地域経済への寄与も意識されていることが分かった。先駆的事例である韓国の「一社一村」運動については,韓国農協中央会,農村サラン運動国民本部における取り組み実績に対する評価についてヒアリング調査を実施するとともに,企業(サムソン/アシアナのCSR事業担当者)および提携農村(マウル責任者)との意見交換を実施した。その結果,主要な企業では,農村活動に参加する社員のインセンティブを高める目的から「社会貢献ポイント制」を導入し,給与や処遇について反映させるべく工夫を行っていることが分かった。日本における都市と農村との協働はまだ始まったばかりではあるが,農業・農村の存在を単なる癒しの場としてのみ捉えるのではなく,社会的スタビライザー(安定装置)として積極的に位置づけ,行政や企業が取り組みを継続できるようなシステムの構築が課題であることが改めて確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「企業の森」の調査・分析においては県および関係市町村,さらには地元森林組合と企業のCSR事業担当部局の理解と協力が得られていることが大きい。また,韓国「一社一村」運動に関する調査研究については,カウンターパートとして研究をサポートする韓国農村振興庁の研究者の支援が得られていることに加えて,研究分担者である李教授(九州共立大学)が韓国企業社会に対する専門的知識と深い理解を有していることも大きく関わっている。
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今後の研究の推進方策 |
和歌山県の「企業の森」事業については,関係主体・ステークホルダーへの実態調査をさらに深め,多面的な視角から効果の検証を進める。また,国内他府県の事例研究により,同事業の新たな展開可能性について考察する。さらに,韓国「一社一村」運動の評価に関しては,CSR事業担当者から一歩進んで社員の意識変化に関する考察の可能性を検討する。あわせて,インセンティブ手法の効果についても検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「企業の森」関係主体へのヒアリング調査,参加企業社員へのアンケート調査(以上,和歌山県関連),国内比較調査(高知県を予定),「一社一村」運動参加企業社員へのアンケート調査とCSR事業担当者への補足ヒアリング(韓国),および研究会の開催。
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