研究課題/領域番号 |
23614012
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研究機関 | 高崎経済大学 |
研究代表者 |
飯島 明宏 高崎経済大学, 地域政策学部, 講師 (70391828)
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研究分担者 |
後藤 和也 群馬県衛生環境研究所, その他部局等, 研究員 (30599866)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 河川環境評価 / 環境教育 / 河川水質 / 生活排水 / 生物多様性 |
研究概要 |
群馬県と埼玉県の県境を流れる神流川は、関東地方にある国直轄区間10 km以上の河川を対象とした水質ランキングで最上位に位置する清流であり、上流域の自治体の主要な観光資源になっている。本研究では、このフィールドを活用したエコツーリズムの創出を目指し、環境学習プログラムの教材となる基礎データを収集すべく、神流川上流域の3地点において水質、水生生物、河川流量の調査を行った。 下流域では、硝酸イオン濃度が他の2地点よりも有意(p < 0.05)に高かった。硝酸イオン濃度および河川流量から算出した各調査地点における硝酸性窒素汚濁負荷量は、上流からそれぞれ約30 t-N/year、約90 t-N/year、約550 t-N/yearとなり、下流域には多くの窒素負荷があることが示唆された。流域市町村の汚水処理人口普及率は低く(上野村:87.5%、神流町:34.8%、藤岡市:41.8%(2007年度))、生活排水の負荷がその一因であると推察された。 各調査地点で採取された水生生物を、汚濁耐性に応じて、汚濁に耐えられない種と汚濁に耐えうる種に分類した。上流から下流に向かって、2群間の生物種の占有割合が顕著に変化することが確認された。また、Simpsonの多様度指数を用いて2群間の生物多様性を比較したところ、汚濁に耐えられない種の多様度は上流域で相対的に高く、下流域で低くなる傾向が見られた。反対に、汚濁に耐えうる種の多様度は、下流域で相対的に高く、上流域では低い傾向が確認された。 水環境健全性指標を用いた環境評価によっても、水質および水生生物による評価と同等の結果が得られた。比較的明瞭な水質変化と生態系の変化が見られる神流川は、人間の営みと生態系の緊密な関係を学習するフィールドとして適していることが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
環境学習のフィールドとなる神流川流域の自然生態系の基礎データを十分に収集することができ、上流から下流までの河川環境の変遷を捉える事ができた。この変遷の様子を、水環境健全性指標によって正確に評価できることが確認でき、この指標を環境学習の教材として利用できることが示された。この成果により、初年度の計画の「地域河川生態系の実態を水環境健全性指標で評価する」は達成された。 また、神流川の河川生態系に影響を与えている地域社会の構造については、主に流域市町村の汚水処理人口普及率について解析した。これにより、神流川の硝酸性窒素汚濁負荷量に対する生活系排水の寄与を把握することができたが、その結果として農業系および自然系の負荷についても考慮する必要性があることも分かってきた。初年度の計画の「研究フィールドの地域構造を分析し可視化する」は概ね達成されたと評価できるが、不足するデータについては今後の研究の中で解析を加える予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の研究の中心は、エコツーリズムの核となる環境学習プログラムの教材開発である。河川環境を評価するためのツールとして、水環境健全性指標の有用性が確認されたので、これを初等・中等教育層向けに改良し、ツーリズムにより適した学習教材の制作に取り組む。同時に、研究フィールドの地域構造について不足するデータを収集し、環境学習の基礎となるデータの充実を図る予定である。また、神流川の河川環境について通年調査を行い、季節による環境変化についても学習プログラムの項目に加えていく。 旅行者向け環境学習プログラムの開発と並行して、コーディネーター向けハンドブックも制作していく予定である。加えて、このプログラムの受け皿となるNPO法人とも協働し、環境学習会の試行実験を実施し、運用上の課題や改良点についても検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費は、主に環境調査に必要な資器材を調達するために計上した。水質検査に必要な器具や試薬、水生生物調査に必要な用具、川での安全管理に必要なライフジャケット等の物品を購入する予定である。 旅費は、神流川流域でのフィールドワークおよび国内・海外での学会発表を行うために計上した。 謝金は、フィールドワークおよびデータ分析に係る研究協力を得るために計上した。 その他の経費としては、学会参加登録やホームページ制作委託に必要な経費を計上した。
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