本研究は、わが国のインバウンド観光を国際的な視座より展開していくために、受け手である消費者のコンテクストに応じた「おもてなし」をはじめとするわが国独自の様々な観光コンテンツの充実とその提供による、訪日観光客の満足度を高める国家レベルでの政策展開、さらには組織レベルでのマネジメント戦略が必要であるとの基本設定に基づき、未だ明らかにされていない「おもてなし」の概念の定義と規定要因を明らかにし、測定手法の開発とそれを用いた国際比較を通して、国際社会におけるわが国の現状とその特徴を定量的に明らかにすることを目的とするものである。 そこで本研究においては、「おもてなし」の概念化、およびその定量的把握の検討を行った。具体的には先行する各領域における研究成果を踏まえ、さらには観光業に関わる国内外の関係者へのインタビュー調査を実施し、最終的に「おもてなし」の概念構成やその規定要因などに関する調査票による調査を実施し、定量的なデータ構築を行った。なお、本調査においては、国際比較を視座に入れているため、当該研究課題において関連する、先行研究および当該課題に関しての研究実績を要し、データの構築が進められている諸機関などとも意見交換を実施し、国際比較研究により活用しうるデータ構築の方法と内容の検討を行った。 本研究の結果としては、日米間における「おもてなし」の概念には、明確な違いが見られた。またその構成要素として位置づける事のできる「文化」、「食」、「人」の融合をどのように位置づけていくかが、「おもてなし」を概念的に検討していく上で重要となる。 課題としては、本研究の結果を実践活動につなげていくことが重要であり、そのことにより、日本の各地域のブランド構築戦略の検討が可能となる。本研究は、アメリカ人を対象としたものであり、今後は、アジア圏や欧州の消費者を対象に同様な研究を進める必要がある。
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