研究概要 |
観光学と生活空間再生論の視座に基づく「観光まちづくりの理論と実践」の考察を「研究目的」として、昨年に引き続き、理論研究と事例研究に取り組んできた。 一方の理論研究からは、次のような結果をえた。1)三重県松阪市柚原町の日常生活や行事活動などの参与観察で捉えた、観光まちづくりや生活の「実践」の意味を批判的に考察し、その結果について「生活空間再生論の「実践」論に関する一考察」(奈良県立大学紀要『地域創造学研究』XV, pp.1-24, 2012)にまとめた。2)「実践」に関してはまた、観光学の基礎論でも根本的課題となることが、「観光学が実践の学として成立する可能性について」(観光学術学会『観光学評論』1(1),pp.35-50, 2013)に発表された。3)生活空間再生論において、生活空間と人間社会全体が成立する基盤に「自然・生態系」および「対面的社会関係」という二つの要件が定立されることを、フッサール「生活世界」と今西錦司「生物全体社会」の概念を手ががりとして検討し、その結果を「生活空間再生論における人間社会の成立の根本的要件」(奈良県立大学紀要『地域創造学研究』XVI, pp.1-27, 2012)にまとめた。4)山村限界集落における、観光まちづくりなどの地域再生の実態をとらえる視座について、生活空間再生論から新たな視座を検討し、その結果が「山村再生の実践に関する生活空間再生論の新たな視座」(奈良県立大学紀要『地域創造学研究』XVII, pp.1-34)にまとめられた。 そしてもう一方の事例研究については、柚原町の観光まちづくりと日常生活の実態に関する現地調査を継続してきた。その結果については、「生活の実践からみるある山村の風景」(奈良県立大学紀要『地域創造学研究』)を執筆中である。 以上の研究から、観光まちづくりによって「持続可能な社会」を構想する理論と実践が探究された。
|