研究課題/領域番号 |
23614021
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
金城 盛彦 東海大学, 政治経済学部, 教授 (30317763)
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キーワード | 沖縄 / 宿泊業 / 就業意識 / カイ2乗検定 |
研究概要 |
初年度に「ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ株式会社」傘下の「株式会社ロワジール・ホテルズ沖縄」を対象に実施した予備調査の結果の集計と初期解析を行いました。季節変動はあるものの,総従業員数約300名のうち有効調査票数は251票とほぼ全数調査に近い調査票の回収を実現しました。また,性別は男性140名(55.8%),女性99名(39.4%),未記入12名(4.8%)であり(( )内は比率。以下,同様),たとえば正社員が125名(49.8%)で,非正社員が103名(41.1%),未記入が23名(9.2%),就業部門も宿泊が65名(25.9%),料飲が81名(32.3%),宴会が22名(8.8%),営業・管理が51名(20.3%),その他部門が13名(5.2%),未記入が19名(7.6%)でした。実際の従業員全体の正社員比率がほぼ50%あること等から,調査は母集団の階層分布特をある程度反映しているものと思われます。 調査結果を用い,本研究の主目的である,1.従業員の離職意向,とその裏返しである2.(継続)就業以降,の2点を結果,その他の項目を原因としたクロス表を作成,カイ2乗検定を行い従業員の就業意向の決定要因の抽出を試みました。考察結果からは,就業意向と出生順位の相関は検証されなかったことから,予想に反し長男の家督継承による強い先祖崇拝といった地域文化特性の影響は見られませんでした。一方で,離職および就業いずれの場合でも,本人よりも家族の意向が優先されることや,基本給よりも賞与等の改善・向上が離職を抑え,就業意向を向上させること等ユニークな結果が抽出されました。 その後は,同じ従業員の離職・就業意向を対象に,那覇地区の広範な宿泊業で実施する本調査用の「簡易調査票」の作成に向け,同データに主成分分析を施し,意向の醸成の主要因を抽出する作業を行っています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「研究の目的」の達成度については,残念なが遅れが生じています。その主な理由は以下の2点です。 第1の原因は,平成24年度下半期にはじまった所属機関移籍に関わる,選考,採用,移籍の一連の手続きに時間を割かれたことです。ただし,本事由はそれまでの経済学科から観光学科へ,かつ調査対象地域である沖縄の研究機関への移籍に向けた取り組みでした。よって本取り組みは,本研究はもちろん一連の観光研究に専念し,かつその成果をダイレクトに教育に活かさんがためのものであり絶好の好機であり,不可欠のものであったと認識しています。 第2の原因は,予備調査の結果から,当初設計した調査票での,本研究の第2の目的ある「「サーチ・マッチング理論」による沖縄県の宿泊業従業員の「就業意欲と環境のミスマッチを探る調査」」の実施の可否の判断に時間を有してしまったためです。同調査には,転職経験のある就業者を対象としたパネル・データが不可欠です。しかし,研究対象である沖縄県には同種のデータは存在しないため,転職経験に関する質問を調査票に盛り込むことで代用しました。しかし,過去の経験に関する質問は難解にならざるを得ず,回答に混乱が散見されるという問題が生じてしまいました。その修正の可能性を探ることに時間を要してしまいました。
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今後の研究の推進方策 |
遅延の原因の1つとなった,移籍問題はすでに解決し,4月より沖縄県の観光系の研究・教育機関へ転職しました。よって,今後は研究に専念出来ると共に,これまで本土より県内の協力機関を通じて,設計,実施して来た調査・集計・解析作業を,沖縄県内で自ら主導して実施できる地の利を得ることが出来ました。また,新たな所属機関では本テーマに関心の高い大学院生の指導に当たることになったため,同院生の研究課題の一環として,本研究への参画が期待できる状況になりました。 遅延の原因の2つ目の「「サーチ・マッチング理論」による沖縄県の宿泊業従業員の「就業意欲と環境のミスマッチを探る調査」」と,現有調査票の祖語の問題に関しては,今後も様々な修正可能性を検討しますが,物理的制約を踏まえ,本研究のもうひとつのテーマである「「組織コミットメントを測る調査」に基づく組織行動論の観点から見た沖縄県の宿泊業の職務満足(ES)の実態把握」を優先させる決断を行うつもりでいます。 これら2つの研究テーマ,特に後者のテーマはデータ入手の難しさから,互いに補完するものの,連続したテーマであり,後者を断念したとしても前者に影響は生じません。むしろ,前者の結果は後者の調査の再設計に援用できることからも,前者の調査への集中・徹底の意義は深いと思います。
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次年度の研究費の使用計画 |
予算の繰り越しが生じた理由は,予定していた第2回以降の予備調査が実施出来ず,従って本調査の実施も次年度へ繰り越さねばならなくなったためです。 予備調査遅延の最大の理由は,「現在までの達成度」に記した通り,第1回の予備調査の結果から,当初設計した調査票での本研究の第2の目的,「「サーチ・マッチング理論」による沖縄県の宿泊業従業員の「就業意欲と環境のミスマッチを探る調査」」の実施の可否の判断に時間を要してしまったことにあります。加えて,平成24年度下半期には所属機関移籍も伴い,選考,採用,移籍の一連の手続きに時間を割かれ益々,予定されていた諸調査が実施出来ませんでした。 次年度の予算の使途は,1.調査結果の集計作業のための「人件費・謝金」を増やす予定です。2.石垣島への出張費(調査対象の拡充先として,石垣島のホテルを設定したため),3.研究機関の移転に伴うPC等若干の研究環境・施設整備費,4.同様の調査の比較検証・調査のための国内外の出張費,の構成を軸に変更したいと思います。 項目1は,移籍に伴う環境変化で,集計作業員の確保が可能になったための変更です。2は,残り一年でより効率的な研究結果を得るために,当初予定していた那覇地区の宿泊業に,一部地理をはじめ物理的な諸条件が違う宿泊業を対象とした調査の追加に伴う変更です。3は,研究機関の移籍に伴い,デスクトップPCやプリンター等の設備や,文献等の資料のいくつかを返還しなければならなかったため,関連備品,設備,資料を新たな所属機関でも至急整備する必要が生じたための変更です。4は従来から予定していた,研究成果に関する意見交換や追加調査のためのUNWTO訪問等,国内外の機関,組織への出張旅費の申請です。
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