研究課題/領域番号 |
23614026
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研究機関 | 横浜商科大学 |
研究代表者 |
宍戸 学 横浜商科大学, 商学部, 准教授 (00364290)
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キーワード | 学習型観光 / 教育観光 / 教育旅行 / 教育効果 / 体験観光 / 情報提供 / 学習プログラム / 職業体験 |
研究概要 |
「学習型観光」を利用した教育観光のフレームワーク研究の2年目の成果は、以下の3点である。 第一に「民間が提供する学習型観光プログラムの実態」である。旅行会社やホテルが扱う何らかの「学び」を目的とする商品が増えているが、旅や体験から何かを学びうる「旅育」への関心が強いものの、具体的に学びを進化させるプログラムはまだ少ない。その中でも、仕事を学び、その体験を通して自己理解をはかる「仕事旅行」や、小・中学生が休業中にキャンプ活動等により自然体験旅行を行う「トムソーヤクラブ」などの事例においては、目的の明確化・参加者の主体性・人との交流など、効果的な学びの要素が多く含まれるものがあることがわかった。 第二に「観光地の学習型観光プログラム開発の現状」である。「長野県」「長崎県」「沖縄県」を対象地域とし、学習型観光プログラムの実施状況や課題、今後の取り組みについて調査した。海外の教育旅行の誘致活動が盛んになる一方で、家族向けなど一般旅行者向けの体験プログラムはまだ少なく、今後の課題となっている。 第三に「教育旅行プログラムの情報発信の現状と課題」である。学習型観光は、学びの目的とその方法を明確に伝える必要があるために、情報発信が重要である。そこで、各地域の教育旅行誘致における情報提供の実態を調査した。パンフレットやウェブサイトなどにおいて多くの情報発信が行われ、その取り組みは活発化している。具体的に教育効果を強く意識したプログラム開発と情報提供を行う地域がある一方で、その取り組みが不十分な地域も多い。教育効果を伝える情報の充実により、学校と地域の適切なマッチングが実現することが明らかとなった。 なお、学校の学習型観光プログラムについて、複数学校・教員に聞き取りを行ったが、教育旅行に対する各校の取り組みは様々であり、学校としての特色は見いだしにくいことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
観光地の事例調査については、前年度までの調査地域である九州地区及び沖縄、北海道の取り組みは継続調査し、それに加え、今年度は長崎・長野など先進的な地域を追加調査し、多くの事例調査とデータ収集が出来た。 一方で、企業の学習型観光商品は非常に多くなっているものの、十分な教育フレームを持っている取り組み例は少なく、2,3の事例にとどまっている。また、教育旅行等を推進する各自治体を含む観光機関に対する調査票調査については、事例から調査すべきポイントを修正する必要があると判断し、最終年度に実施することにした。
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今後の研究の推進方策 |
企業提供の学習型観光のプログラムについては、学びの要素をいくつか持つものの、教育目的が明確でない例も多く、さらには企業側の学びに対する意識が低いケースが多く、明確な教育のフレームを見いだすことが難しい。引き続き、事例の収集を行うとともに、いくつかの先進事例をもとに教育フレームの抽出をはかることにしたい。 また、各自治体等の観光推進機関に対する調査票調査は、当初は基礎データを入手する目的での実施を予定していたが、事例を収集する中で、学習型観光の現状把握をしてから具体的な内容や取り組みについての設問などを含む方が、有益なデータを入手できると判断したため、これは最終年度に実施し、その結果をまとめることにした。 これらの多方面からの研究成果についてまとめ、学会で報告する。そして3年間のまとめとして研究成果の報告書の作成を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
概ね予定通り推移しているので、ほぼ計画に沿って使用する。前年度実施できなかった地方自治体等の観光推進機関に対する学習型観光の取り組み及び推進状況の調査票調査を行う予定であり、これは当初の予定外の支出を伴うが、各地域の学習型観光のプログラムの事例の調査については、予定より早くデータの収集が進んでいるので、研究費の使用上は問題はない。最終年度においては、これまでの研究成果を学会で発表するとともに、3年間のまとめの作成に着手する。
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