研究課題/領域番号 |
23614030
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
後藤 孝夫 近畿大学, 経営学部, 准教授 (60435097)
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研究分担者 |
松本 守 北九州市立大学, 経済学部, 准教授 (50435096)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 観光学 / 第三セクター / コーポレートガバナンス |
研究概要 |
本年度の研究成果は、以下の3点である。第1に、理論研究としていくつか残っている文献調査を実施し、主にガバナンスメカニズムに関する最新の研究動向について包括的にサーベイしている先行研究を整理した。本年度の先行研究の整理の結果を踏まえて、次年度は観光事業を運営している第三セクターに対して実施するアンケート調査票を作成する予定である。 第2に、毎年度総務省より公表されている「第三セクターの等の状況に関する調査結果」のデータが、わが国の観光事業を運営する第三セクターに関する唯一体系的なデータとして存在しており、申請者らは2003年度調査分から2010年度調査分の計8年度分のデータを本年度入手した。そして、入手した第三セクターの経営状況のデータに関してパネルデータ化した。次年度は、本年度作成したパネルデータとアンケート調査で収集する経営データを統合化し、第三セクターの経営に関するデータベースを構築する予定である。 そして第3に、第三セクターのパフォーマンスの決定要因について実証的に分析を行った。とりわけ、(1)民間出資割合と民間出身役員割合の歪みが強い第三セクターほどパフォーマンスが悪い(官民の馴れ合い体質)および(2)Board-size effect仮説(取締役会が小規模な企業ほど経営効率的な意思決定がなされる)という2つの仮説について、2007年度のクロスセクションデータを用いて分析を行った。分析の結果、民間出資割合が低く、民間出身役員割合が高い観光・レジャー分野の第三セクター会社法法人ほど、パフォーマンスが悪い可能性があることが明らかとなった。なお、上記研究の成果は、2012年1月に開催された日本交通学会関西部会にて報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、観光第三セクター法人の経営破たん要因について実証的に明らかにすることを目的としている。本年度では、(1)観光第三セクターの経営に関する基礎的なデータの継続的な収集、(2)観光第三セクターの経営パフォーマンスに与える要因(変数)の発見とデータの収集および(3)単年度の実証分析から複数年度の実証分析への拡張の3点について研究実施を予定していた。 このうち、(1)観光第三セクターの経営に関する基礎的なデータの継続的な収集については、申請者らは2003年度調査分から2010年度調査分の計8年度分のデータを本年度入手した。(2)観光第三セクターの経営パフォーマンスに与える要因(変数)の発見とデータの収集については、主にガバナンスメカニズムに関する最新の研究動向について包括的にサーベイしている先行研究を整理することにより、経営パフォーマンスに与える要因(変数)について理論的な裏付けのある仮説を構築できた。(3)単年度の実証分析から複数年度の実証分析への拡張については、入手した第三セクターの経営状況のデータに関してパネルデータ化を実施した。 ただし、経営パフォーマンスに与える要因に関するデータ収集と複数年度の実証分析については、震災の影響でアンケート調査の実施を次年度の実施としたため、まだ達成できていない。しかし、次年度で行うべきアンケート調査に関する準備を本年度実施することができた。そのため、本年度の達成度を「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は、第1に経済学の視点による観光第三セクターの設立および運営に対する政府の介入手法に関する最新の研究動向について文献調査を終えたい。また第2に、(1)各観光第三セクターへの郵送によるアンケート本調査(約700社対象)(2012年度に実施)、(2)入手したデータのデータベース構築と公表(2012年度~2013年度に実施)および(3)入手データに基づくパネルデータ分析の実施(2012年度~2013年度に実施)のように研究を進める予定である。 そして、本研究の研究成果の公表についてであるが、本年度の研究成果を踏まえて、2012年度から最終年度にかけて、申請者らが所属している国内外の学会での報告(たとえば、日本経済政策学会など)を行い、論文を執筆し、国内外の査読付雑誌(たとえば、日本経済研究など)に積極的に投稿していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の主な使用計画は次の通りである。第1に、次年度では観光事業を運営する第三セクターへの郵送によるアンケート調査を実施するために、アンケート調査実施に関わる通信費および印刷費を計上している。 第2に、アンケート調査により入手できるデータは一般に紙ベースであることから、アンケート調査で収集した第三セクターの経営状況に関するデータと現在入手済みのデータの統合化およびパネルデータ化のための研究補助を目的に謝金を計上している。 第3に、第三セクターへのヒアリング調査および研究分担者との研究打ち合わせのために、次年度も旅費を計上している。 そして最後に、(1)研究動向を追う文献調査のために必要な図書費を次年度も計上している。
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