研究課題/領域番号 |
23615001
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮本 浩一郎 東北大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70447142)
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研究分担者 |
ハン ジュンギュ 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (40455928)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 安全環境計測法 / 化学センサ / 化学イメージング / スクリーニング |
研究概要 |
本研究の目的は、「ポータブル化学イメージシステムを用いた細胞層の透過率分布の可視化により、有害・有用化学物質の新規スクリーニング法を提案・実証」することである。ポータブル化学イメージシステムは、手のひらサイズでありながら、注目領域の空間分解能を自在に変更しつつセンサ面上の化学種の分布を化学イメージとして取得可能であり、細胞層の透過率分布の可視化に最適である。細胞層の透過率分布観察によって、細胞間接合の分布変化に基づく新しい細胞アッセイを提案し、効率的な化学物質スクリーニング法を確立する。 平成23年度には、研究分担者と協議を重ねながら、スタンドアロン動作可能な「ポータブル化学イメージシステム」を構築した。システム全体の制御にはバッテリ駆動可能なマイクロコントローラを使用した。測定に必要な走査型変調光源には、有機ELディスプレイ上に表示される光点を用いた。マイクロコントローラの制御プログラムには、測定モードとして、センサ基板上のpH二次元分布を取得する‘化学イメージ測定モード’と、センサ基板上の1点でpHを精密に測定するために、交流光電流‐バイアス電圧特性(I-V特性)を取得する‘I-V特性測定モード’の2つを実装した。それぞれのモードで取得した測定データは装置上面のディスプレイパネルに表示すると同時に、SDメモリカードに記録されるため、測定終了後にPCなどに読み込んで任意の解析処理を行う利便性も備えている。 さらに測定システムの評価も行った。pH4,5,…,8のpH標準液の交流光電流‐バイアス電圧特性(I-V特性)を取得し、I-V特性曲線の変曲点電圧のプロットから,pH感度51.4mV/pHでpH変化を検出可能であることを確認した。この値を用いることでpH未知の溶液を測定することができる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに、ポータブル化学イメージシステムの構築を行った。持ち運びが可能、かつスタンドアロン動作が可能であり、さらに2つの測定モード、測定データの表示・保存など従来の測定システムを大幅に凌駕する特徴を持つシステムを構築することが出来た。今後、本システムを利用した細胞アッセイ法への進展が期待される。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に開発したポータブル化学イメージシステムによって、細胞層の透過率分布測定を行う技術を開発し、新しいアッセイ系の提案を行う。 重要と考えられるのは、センサ表面の改質による細胞接着性の向上である。センサの表面状態は、細胞活性に大きく影響することがよく知られているため、細胞の接着性の向上は測定の品質に直結すると考えられる。細胞がうまく接着されない場合、フィブロネクチン等の足場タンパクの吸着状態を標識抗体法によって解析しつつ、センサ基板表面の修飾方法について検討する。 センサ表面の改質に続いて、測定電極・培養チャンバの形状、培養環境を維持しながら測定を行う機構などの技術課題が予想されるが、これまでの細胞を用いたバイオセンシング研究で培った成果を生かして解決し、細胞層の透過率分布の可視化を行う。個々の細胞間のタイトジャンクションの変化によって、細胞層の透過率分布がいきいきと変化する様が観察されると期待される。 ポータブル化学イメージシステムを用いた測定結果を韓博士のこれまでの測定結果と比較して、再現性を確認する。例として、Caco-2細胞を用いてカプサイシンによる透過率分布の変化を測定する。透過率分布測定からは、従来の測定よりも格段に多くの情報が取得されることが期待されるため、測定結果を詳細に解析することにより新たな知見を見いだし、新規の化学物質スクリーニング法の提案を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成24年度請求額とあわせ、次年度に計画している研究 の遂行に使用する予定である。 次年度より研究内容が「装置開発」から「培養細胞試料を用いた検証実験」の段階に順次移行するため、測定回路用電子部品と併せて、卓上遠心機・細胞培養用プラスチックウェア・細胞培養用試薬各種(培養液など)を支出費目として計上した。また、研究分担者との緊密な連携の重要度が増すために、研究打ち合わせ旅費を計上した。さらに、学会において研究成果を報告することを想定して成果発表旅費も計上した。
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