研究課題/領域番号 |
23615004
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
波多 宣子 富山大学, 理工学研究部(理学), 准教授 (90134999)
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研究分担者 |
田口 茂 富山大学, 理工学研究部(理学), 教授 (80089838)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 有機イオン会合体 / リチウム / 多環芳香族炭化水素 / 液体電極プラズマ発光分析装置 / 分配 / 抽出 |
研究概要 |
(1) 有機イオン会合体の抽出能と化学成分の分配挙動 (a)無電荷成分とイオン性成分を一つの物質で比較できる両性化合物であるピリジルアゾレゾルシノールについて研究した。無電荷成分ばかりでなく、一価の陰イオンもイオン会合体相(IAP)へ分配していた。(b)リチウムの抽出には、有機イオン会合体を構成する陽イオンとして、ベンゼトニウムよりもゼフィラミンのほうが適当である、すなわち、ゼフィラミンからなるイオン会合体の抽出能がベンゼトニウムからなるイオン会合体よりも大きいことが分かった。(2) 微量成分分析への応用 (a)ベンチャー企業マイクロエミッション社により開発されたハンディ元素分析器(液体電極プラズマ発光分析装置 LEP-AESは,試料量が40 μLで済み,多元素同時測定が可能である。しかし,検出限界が0.1~100 ppmであり,感度が低いために,排水基準値レベルの重金属の測定も困難である。有機イオン会合体抽出により,分離・高濃縮を行い,レアメタルであり,一般的なキレート試薬では錯生成が困難なリチウムの定量について検討を行った。(b)環境水中の有機化合物のイオン会合体相抽出/HPLC法を開発する。多環芳香族炭化水素(PAHs)を一括してイオン会合体相に抽出し,HPLCにより測定する方法を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.化学成分(ピリジルアゾレゾルシノール)の分配挙動に関して研究し、IUPAC International Congress on Analytical Sciences 2011 (ICAS2011)に発表した。化学成分ピリジルアゾレゾルシノールは、無電荷成分ばかりでなく、一価の陰イオンもイオン会合体の構成成分である有機陽イオンとともに有機イオン会合体相に抽出されていることが示唆され、さらに、解析を進める予定である。2.レアメタルであるリチウムの分離/濃縮について検討し、日本分析化学会第60年会において発表した。有機イオン会合体相へのリチウムの抽出率は80%以上あるが、より定量的に抽出することができるように検討していく予定である。3.河川水中の多環芳香族炭化水素(PAHs)の分離/濃縮定量に応用し、The 4th IWA-ASPIRE Conference & Exhibition, (第4回IWAアジア太平洋地域会議)、平成23年度日本化学会北陸地区講演会と研究発表会において発表した。定量条件の詳細について検討中である。4.遠心分離に代わる分離として、膜による分離について検討した。クロムをピリジルアゾナフトール(PAN)錯体とし、イオン会合体相に抽出した後、膜による分離について検討したが、定量的な結果は得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
(1) 有機イオン会合体の抽出能と化学成分の分配挙動については、化学成分ピリジルアゾレゾルシノールについて、無電荷成分と一価の陰イオン成分以外の成分も考慮した解析を進める。(2)(a)リチウムのイオン会合体抽出については、より定量的に有機イオン会合体に抽出されるように検討する。(b)多環芳香族炭化水素(PAHs)の分離/濃縮定量を詳細な条件を検討する。(c)他の有機有機化学物質や微量金属について有機イオン会合体による分離・濃縮を検討する。測定法としては黒鉛炉原子吸光光度(GF-AAS),高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などを使用する。イオン会合体相と水相の分離に,遠心分離器を使用しない分離法の利用を検討する。開発した方法を環境水に応用する。
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次年度の研究費の使用計画 |
主として物品費(純水製造装置用消耗品、HPLC用カラム、ランプ、器具類、試薬類)として使用する。残りは、出張旅費、その他(論文別刷り代など)として使用する予定である。 物品費 400,000円 旅費 100,000円 その他 100,000円 計 600,000円
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