研究概要 |
(1)有機陽イオンと有機陰イオンがどのような濃度条件で液体イオン会合体を生成し,また,どのような条件で,有害化学物質である多環芳香族炭化水素を水相からイオン会合体に分離濃縮できるかを,陽イオンとしてベンゼトニウイオン(Ben+),陰イオンとしてエチルベンゼンスルホン酸イオン(EBS-)を選び,検討した。その結果,①白濁せず,新しい相が出現しない領域,②水相で沈殿が生成するが,イオン会合体相は出現しない領域,③水相が白濁し,白濁した液状イオン会合体相が出現する領域,④透明な有機相・水相が出現する領域があることがわかった。沈殿や液状イオン会合体の生成が,[Ben+]や[EBS-]がある程度大きいだけでなく,[EBS-] >>[Ben+]の条件を満たさなければならないことがわかった。多環芳香族炭化水素の最適抽出条件,[EBS-] =20 mmol/L, [Ben+]=0.5 mmol/Lの水溶液から生成させた液状イオン会合体の組成をHPLCによって求めた。その結果,[EBS-] /[Ben+] = 5.2となった。液状イオン会合体にはBen+に対して大過剰のEBS-が存在することがわかった。液状イオン会合体相中の過剰のEBS-がどのような状態で存在するのか,現在のところわかっていない。 (2) 微量成分分析への応用 (a)有機イオン会合体抽出により,分離・高濃縮を行い,一般的なキレート試薬では錯生成が困難なリチウムの定量について検討を行い,有機イオン会合体相抽出/酸逆抽出システムを開発した。このシステムをリチウムの分離・濃縮/黒鉛炉原子吸光光度定量に応用した。(b)有機イオン会合体相抽出/酸溶解システムを開発し,カドミウムの分離・濃縮/黒鉛炉原子吸光光度定量へも応用した。(c)水中の多環芳香族炭化水素の高濃縮分離/HPLC/蛍光検出に応用した。
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