研究課題/領域番号 |
23615006
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
伊永 隆史 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (30124788)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 安定同位体 / 動態解析 / 質量分析 / 食品安全 / 産地判別 / 産地偽装防止 / isotopomics |
研究概要 |
アイソトポミクスに関する基礎研究を推進するためには、アミノ酸分子レベルでの安定同位対比分析の開発が重要課題であるが、より実用性の高い脂肪酸分子レベルでの実験検討を優先した。初年度は、脂肪酸の分子レベル安定同位体比分析をより簡便で汎用性の高いものに改良して実用化するために、測定手法の迅速化・簡便化を行った。脂肪酸の誘導体化法である三フッ化ホウ素を用いたエステル化は、試薬に毒性があり取り扱い上の問題点がある。アミノ酸の誘導体化法の簡易化を参考に、脂肪酸の簡易エステル化を目指して検討をおこない、簡易化法の開発に成功した。水系下、有機系下の反応条件でメチルもしくはエチルクロロフォルメイトを使用して、エステル化の最適な条件を検討した結果、エチルクロロフォルメイト、エタノールを用いた有機系下でのエチルエステル化で、回収率もよく、かつ正確な脂肪酸の安定同位体比を得た。この方法では常温下で15分程度という短時間で誘導体化が終了することから、従来法では1日を必要とした脂肪酸の誘導体化にかかる時間を短縮して実用化へ向けた簡易化が達成された。本研究で開発した簡易分析法を脂肪酸分子レベル安定同位体比測定に応用することを目的に、飽和および不飽和脂肪酸の各種分子中の安定同位体比の測定精度について検討した。その結果、食品試料中の水素酸素安定同位体比については従来から水素同位体交換のため測定精度に問題があることが知られていたが、脂肪酸分子の酸素安定同位体比についても所定の分析精度が得られないことが新たに判明した。今後は、産地判別研究に関する安定同位体比分析の精度向上と食品構成分子の化学反応に関係する同位体分別、同位体交換、同位体濃縮など解明する基礎研究に加えて、安定同位体を含有した食品摂取による代謝・動態解析などに着目した学術研究が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
おおむね予定通りに進展している。
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今後の研究の推進方策 |
各種脂肪酸分子の炭素・水素安定同位体比は銘柄牛肉の判別検査に十分な測定精度を有するので、既存の安定同位体比測定に比べて、より進化した産地判別検査が可能になる優位性を秘めている。
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次年度の研究費の使用計画 |
分析精度の向上を目指し、調査・研究を進めていく予定。
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