研究課題/領域番号 |
23615007
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
石田 康行 中部大学, 応用生物学部, 准教授 (70273266)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 磁性粒子プローブ / 抗原抗体反応 / 薬剤耐性菌 / 有機アルカリ / 反応熱分解GC / 加水分解及びメチル化 / リン脂質 / 脂肪酸 |
研究概要 |
まず,磁性ナノ粒子プローブに任意の細菌種を選択的に採取するための,最適な吸着条件の決定を試みた。ここでは,細菌試料にはサルモネラ菌を用い,これを当該菌に対する抗体で表面修飾した微小な磁性粒子に吸着させることを試みた。また,吸着したサルモネラ菌の検出には、マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)を活用した。様々な条件下で吸着実験を行ったところ,吸着の際の温度および時間をそれぞれ37℃および20分に設定したときに,最も効率的にサルモネラ菌を磁性粒子表面上に捕集できることが分かった。 そこで,次に,こうして磁性粒子上に捕集したサルモネラ菌を直接オンライン操作で反応熱分解ガスクロマトグラフ(反応熱分解GC)分析するためのプロトコル構築を試みた。まずは,サルモネラ菌そのものを試料に用いて,その高感度検出に最も適した化学反応場の構築を実施した。様々な反応試薬,その濃度,および反応温度などの各種パラメーターを検討した結果,化学試薬として強有機アルカリの一種である水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)を使用し,その濃度を25 wt%,また反応温度を400℃に設定したときに,当該細菌を構成する細胞膜脂質中の脂肪酸成分を,それらの加水分解及びメチル化反応を介して高感度に検出できることを見出した。さらに、実際にサルモネラ菌を吸着させた磁性微粒子を試料に用いて,TMAH共存下での反応熱分解GC分析を行った結果、当該細菌に特有の一連の脂肪酸成分を明瞭に検出することが可能になった。 このように,本年度の研究成果として,磁性ナノ粒子プローブを反応熱分解分析法と組み合わせた新規計測システムを構築することができ,次年度からの実際の生体マトリックスを用いた応用研究を行う上で欠かせない,方法論を確立することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画・方法に記載した通りに、磁性ナノ粒子プローブと反応熱分解分析法を組合わせた新規計測システムを試作することができ、その評価も行えたため、自己評価として(2)を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
本年度開発した計測システム(磁性ナノ粒子プローブ-反応熱分解分析法)を発展的に応用して、実際の生体マトリックス中に含まれる細菌の選択検出を試みる。具体的には、血液や飲料水などの生体マトリックス中に任意の細菌種を人為的に添加し、そこから任意の細菌種に含有される脂肪酸成分を本手法により選択検出することを試みる。さらに、複数の細菌種が混在した系を人為的に形成し、そこから本手法により特定の細菌種のみを特異的に検出する実験も行う。 最終的に、細菌種として薬剤耐性菌を使った実験を行い、耐性作用の発現に伴う脂肪酸成分の化学組成の変異を手掛かりとして、耐性の有無を迅速に決定することを目指す。ここでは、初年度に開発した解析手法を応用して、薬剤耐性菌を含む複数の菌種を人為的に添加した飲料水や血清などの実サンプルの測定を行う。その結果得られる当該細菌の脂肪酸プロファイルを手掛かりに用いて、耐性作用を有する細菌の存在を迅速かつ簡便に決定できる計測システムの開発を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的に消耗品を中心とした物品費、および旅費に研究費を充てることを計画している。消耗品については、抗原、ビーズや反応試薬などの化学試薬類、ガスクロマトグラフ装置関連の交換部品などを主に計上している。また、旅費については、研究成果発表のための交通費として主に使用する予定である。
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