研究概要 |
本研究では、脂肪酸(脂肪)の放射線分解物である2-アルキルシクロブタノン類について、2次代謝産物の多い植物性食品中での高感度分析法を開発し、照射後の消長を明らかにする。これにより、照射食品中の2-アルキルシクロブタノンに由来する健康影響(リスク)評価の基本となる、暴露量評価の基礎データの取得を目指す。また、同時に低線量(検疫処理線量)を照射した農産物の検知技術への応用の可能性を探ることを目的とする。 24年度は、大豆、ナツメグ、カシューナッツについて、ガンマ線照射を行った際の、2-decylcyclobutanone,2-dodecylcyclobutanone, 2-tetradecylcyclobutanone, 2-tetradecenylcyclobutanoneを定量し、これらの化合物が線量に対して直線的に増加すること、生成効率としては、1 kGyの照射により、前駆体脂肪酸1 mmoleから生成する2-ACBsの量は、1.1 nmole ~ 3.8 nmoleと、既報の動物性食品類と同レベルであることを確認した。 また、照射したナツメグを室温貯蔵した際の2-decylcyclobutanoneおよび2-dodecylcyclobutanoneの含量を30週間まで追跡したところ、その含量が照射直後と比較してそれぞれ、65%程度に減少することを確認した。一方、オリブ油に2-dodecylcyclobutanoneを溶解して好気条件で放置した場合にも減少が見られ、この場合には2-dodecylcyclobutanone以外の新規なピークがGC分析で観測された。 サロゲートを用いた分析法の改良については、適切な標準試薬が入手できず断念した。
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