研究課題/領域番号 |
23615011
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研究機関 | 科学警察研究所 |
研究代表者 |
宮口 一 科学警察研究所, 附属鑑定所, 主任研究官 (10370884)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 毛髪分析 / マイクロ粉砕抽出法 / 液体クロマトグラフィー/質量分析 / ガスクロマトグラフィー/質量分析 |
研究概要 |
(1) 催眠鎮静薬などの精神神経用薬は、殺人や強姦などの凶悪犯罪に用いられることが多い。そこで、それら薬物を毛髪から効率良く抽出するための新たな前処理法の検討を行った。動物実験の予定を中止して、それら薬物を長期服用しているヒト患者の毛髪を入手し、抽出効率の解明に用いた。ゾルピデム、フルニトラゼパム、7-アミノフルニトラゼパム及びデスアルキルフルラゼパム並びに抗うつ薬関連化合物であるアミトリプチリン、ノルトリプチリン及びミアンセリンの回収率について検討した結果、これらのうちの多くは、これまでのマイクロ粉砕抽出法の条件では毛髪から抽出されにくいことが判った。過去の報告を踏まえて種々の条件を試した結果、リン酸アンモニウムの45%水溶液(pH 8.4)を抽出溶媒とし、覚醒剤の抽出よりも激しい条件(毎分2500振動、10分間)でマイクロ粉砕抽出を行ったのち、懸濁液にアセトニトリルを加えて液-液抽出することで、マイクロ粉砕抽出法のメリットである迅速性と簡便性をほぼ維持したまま、従来法と同等以上の回収率を達成できることが明らかとなった。(2)マイクロ固相抽出法の一つであるMEPS(Micro Extraction by Packed Sorbent)を自動で行うことが可能なガスクロマトグラフ-質量分析計を用いて、毛髪中薬物の同定分析法の一つであるMIAMi-GC/MS法を実施した場合の性能評価と、実分析への応用を行った。毛髪中のアンフェタミン、メタンフェタミン、MDA及びMDMAをカットオフ濃度0.2 ng/mgで定性分析する場合、標準データと一致した電子イオン化マススペクトルを取得するためには毛髪3 mgを用いる必要があることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度計画していたモルモットへの薬物投与は、より実際的で好ましい材料である薬物摂取者の頭髪が大量に得られたため、実施する必要がなくなった。その他の項目については計画通り実施することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、所期の計画のとおり、実際の鑑定への応用を見据えてより定性能力が高いオービトラップ型質量分析計を用いて検出を行い、正確さや精密さの検証(バリデーション試験)を行う。その後、出来る限り多くの実際の試料の分析を行い、開発法の有用性を検証したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
節約により生じた今年度の未使用額を含めた次年度の研究費を用いて、6月にカナダで行われる毛髪分析の国際学会に出席し、今年度に得られた上記の成果について発表する。その他、上記の研究に必要な備品及び消耗品(メカニカルピペット、HPLCカラム、メンブレンフィルターなど)の購入や、9月に京都で行われる分析化学に関する国際学会(IMSC)への参加費用などに充てる予定である。
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