研究課題/領域番号 |
23615012
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
和泉 博 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 研究員 (20356455)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 生体高分子 / 立体配座 / 構造活性相関 / ケモインフォマティクス / タンパク質 / 多型 / 主要組織適合遺伝子複合体 / 赤外円二色性分光法 |
研究概要 |
1.PDB構造データを活用した構造相同性データマイニング手法の研究タンパク質のアミノ酸配列において、中央付近で部分的に構造相同性の高い特徴的な主鎖の構造パターンがデータマイニング可能なプログラム及び20個程度のサブユニットの構造相同性を一度に比較する手法を開発した。その検証のため、αへリックス型(h: 3β5α4β)、βシート型(s: 6α4β4β)の立体配座コードをテンプレートとして、アミノ酸残基毎の主鎖の立体配座を整理する本手法を、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に適用した。その結果、非古典的MHCクラスI分子であるFcRn, ZAG, HFEを含む、MHCクラスI,II分子と免疫グロブリン(Ig)軽鎖との構造相同性が抽出された。一方で、同じIg軽鎖に属するIgMリュウマチ性因子、Ig重鎖、非古典的MHCクラスI分子MIC-A,B、CD1D及びUL-18(サイトメガロウィルス)は、HisとProに挟まれたアミノ酸配列(HisXaaXaaXaaXaaXaaPro)をとる共通する特徴的な主鎖構造フラグメント(shhshss)を持っていなかった。IgMリュウマチ性因子の存在やこのフラグメントを持たない非古典的MHCクラスI分子が制御を主目的としない活性化に深く関与している点もあわせて、自己/非自己の認識がかかわるなんらかの精密な制御系の機能に携わっていることが示唆された。また、比較を行った古典的MHCクラスI分子及び非古典的MHCクラスI分子すべてで保存されている共通する構造パターンや構造変化が起こりやすいフラグメントであることが一因と考えられる多様性がみられる部位も存在していた。このように、本構造パターン解析法は多くのサブユニットのコンフォメーションを一度に比較し機能との相関性を検証することで、機能に関わる未知の構造情報を抽出するための有効な手法と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.PDB構造データを活用した構造相同性データマイニング手法の研究については、アミノ酸配列の異なるタンパク質に共通する、主鎖骨格をもつフラグメントを簡便にデータマイニングする構造パターン解析法を開発し、免疫グロブリン軽鎖や古典的、非古典的MHCクラスI分子等を用いて検証し、自己/非自己の認識がかかわる精密な制御の知見を与えたことから、非常に進展していると判断した。一方で、2.VCD分光法を用いた生体高分子測定解析手法の研究については、震災の影響を受け、測定制御装置の導入が大幅に遅れたためほとんど研究を進めることが出来ず、今年度は1.のテーマを優先して行ったため、全体の達成度として(2)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.の課題について見出されてきた特徴的な構造パターンを登録しておいて、それらと共通するフラグメントを有するPDBファイルを検索するプログラムを作成する。また、タンパク質のX線結晶構造において、側鎖についてはリガンドとの相互作用、骨格構造の保持などで非常に重要な役割を果たしているにもかかわらず、その整理はほとんどされていなかったことから、立体配座コードの特徴を生かして、側鎖に特徴的な構造パターンは存在しないか検証を行う。さらに、本構造パターン解析手法がRNAやDNAにも適用可能か検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
2.VCD分光法を用いた生体高分子測定解析手法の研究について、震災の影響を受けて測定制御装置の導入が大幅に遅れ実際の支出が次年度になるとともに、予定していた消耗品を購入しなかったため使用予定の2割程度次年度に使用する予定の研究費が生じた。そのため、翌年度は2-1及び2-2の研究課題をあわせて行い、研究を加速させる。また、溶解度の関係で測定の工夫を行ってもペプチドの測定がうまくいかなかった場合には、タキソールのようなアミド結合を持つ生理活性分子を用いて、差スペクトルの手法の有効性を検証する。
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