研究課題/領域番号 |
23615012
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
和泉 博 独立行政法人産業技術総合研究所, 環境管理技術研究部門, 主任研究員 (20356455)
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キーワード | 生体高分子 / 立体配座 / 構造活性相関 / ケモインフォマティクス / タンパク質 / 多型 / 自己抗体 / 赤外円二色性分光法 |
研究概要 |
1.PDB構造データを活用した構造相同性データマイニング手法の研究 タンパク質のアミノ酸配列において、登録しておいた特徴的な構造パターンと共通するフラグメントを有するPDBファイルを検索するプログラムを作成した。αへリックス型(h: 3β5α4β)、βシート型(s: 6α4β4β)の立体配座コードをテンプレートとして、アミノ酸残基毎の主鎖の立体配座を整理する手法と組み合わせてプリオンタンパク質分子に適用し、二次構造帰属の標準的な手法であるDSSP法との比較を行った。プリオンタンパク質の構造データ2w9eと1i4mについて、グラフィカルインターフェースでは分子全体の構造が大きく異なっており、局所的にしか分子構造の重ね合わせが出来なかった。一方で、本手法による比較では構造の違いは一部のフラグメントのみで確認され、アミノ酸配列ValThrThrThrThrLysGlyGluAsnPheThr Glu(65-76 aa.)のhsssshhhhssh(1i4m)とhhhhhhossssh(2w9e)の構造の違いが分子全体の形を大きく変化させていた。DSSP法では、水素結合も含めた二次構造の帰属が行われるため、αへリックス部位の帰属は本手法と比較的一致していたが、その他のフラグメントの帰属は大きく異なっていた。特に、loopもしくはirregularに対応するアミノ酸残基のブランクがかなりの頻度で存在していた。タンパク質3D情報を1D情報に変換する本DCCP(Dictionary of Conformational Code in Proteins)法は二次構造よりも主鎖の形をより的確に反映しており、多数の構造データの中から複雑な形を持ったloop構造のような超二次構造のデータマイニングに有効な手法と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.PDB構造データを活用した構造相同性データマイニング手法の研究については、二次構造帰属の標準的な手法であるDSSP法との比較からタンパク質主鎖の3D情報を巧みに1D情報に変換しているとの評価を受け、COMPUTER SCIENCE, INTERDISCIPLINARY APPLICATIONSのカテゴリーでIF値Rank1の国際誌に受理されており、非常に進展していると判断した。一方で、2.VCD分光法を用いた生体高分子測定解析手法の研究については、アミド結合を持つタキソールのtail部位の解析を行い、実測と予測の比較についてまずまずの再現性を確認したが、分子間相互作用、水素結合の多さなどからVCD強度の弱い不斉炭素部位の絶対配置決定については確証が持てなかった。そのため、差スペクトルの有効性を検証すべく研究を進めている。今年度は1.のテーマの外部からの評価が高かったため、全体の達成度として(1)と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
1.PDB構造データを活用した構造相同性データマイニング手法の研究の課題について、初年度見出した免疫グロブリンと主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子に共通するフラグメント構造が、同じ免疫グロブリンでありながらその構造を持たない自己抗体の生物学的機能の観点からも非常に関心がもたれている。そこで、そのフラグメント構造の分子動力学的解析を行う。また、DSSP法との比較を優先したため行うことが出来なかった、リガンドとの相互作用、骨格構造の保持などで非常に重要な役割を果たしている側鎖についてのタンパク質X線結晶の構造パターン解析を進める。さらに、本超二次構造データマイニング解析手法がRNAやDNAにも適用可能か検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.PDB構造データを活用した構造相同性データマイニング手法の研究について、初年度見出した免疫グロブリンとMHC分子に共通するフラグメント構造が自己抗体の生物学的機能の観点からも非常に関心がもたれており、その動的挙動の解析を進めるように指摘を受けている。そのため、3割程度次年度に使用する予定の研究費として繰越し、分子動力学的解析装置の購入にあてる。 同時に、2.VCD分光法を用いた生体高分子測定解析手法の研究の中で、アミド結合を持つ生理活性分子のVCD解析において、差スペクトルの手法の有効性を検証するために使用する。
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