今年度は、昨年度までに確立した全光子束の分光的精密測定系を用いてより多くの実サンプルの測定を中心に研究を実施した。特に、ホタルルシフェリンルシフェラーゼ反応による生物発光反応については、研究分担者である加藤助教らが構築したミュータントシリーズの量子収率データを蒐集し、学会発表および論文投稿を行った。 また測定系そのものについても、前年度に引き続き積分球式分光放射計の不確かさ評価と改善を行い、より精密な全光子束測定系の構築を行った。特に標準電球を測定するときには、分光器内の迷光成分に起因する不確かさがこれまでの想定以上に大きく、450nmより短波長の領域においてはシグナルの数10%が長波長の赤色光~近赤外による迷光成分となるため、適切な補正処理を導入した。これに基づき、新種ホタル、あるいはセレンテラジン系生物発光反応などについて、精密な発光スペクトルの測定を行うなど、本研究において構築した測定系を広く応用した研究活動を行った。 本システムを用いて校正したLEDの使用についても、共同研究者である中谷氏が開発したプレート型極微弱LED光源の分光全光子束および分光全放射束を測定し、複数の方法による測定結果との整合性を確認することができた。このプレート型LEDをはじめとする参照用レファレンスLED光源用いて、上述の発光反応測定のためのルミノメータなどの精度管理を行うことが可能となり、海外のプレートリーダメーカ(ドイツ、Berthold Technologies社)とも協同して、応用技術が急速に普及する発光測定における光検出の標準化に向けた基盤データの収集を開始するに至った。 今後はアミノルシフェリンのような基質アナログの分光的量子収率測定などにより、ホタル生物発光反応の発光色決定機構の解明に向けた基礎データの取得など、新たな展開を考えている。
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