研究課題/領域番号 |
23616002
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
菊池 裕 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20286438)
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研究分担者 |
穂積 俊矢 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (10597222)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ゼブラフィッシュ / 変異体 / スクリーニング / 脱メチル化因子 |
研究概要 |
<ゲノムDNA脱メチル化に異常を示す新規変異体のスクリーニング> 本年度は、ゲノムDNA脱メチル化因子をコードする遺伝子を遺伝学的手法により同定するため、ゲノムDNA脱メチル化に異常を示す変異体の作製・スクリーニングを中心に実験を行った。現在までは、化学変異原ENUを用いた変異体作製法が主流であったが、最近ゼブラフィッシュではトランスポゾンTol2を用いて挿入変異体を作製する手法が確立されつつある。トランスポゾンTol2を使う方法では、変異体の作製が簡単であり、単離された変異体の原因遺伝子の同定が極めて容易である。そのため、変異体及び原因遺伝子の探索効率を上げるため、トランスポゾンTol2による変異体の作製を行っている段階である。<ゲノムDNA脱メチル化におけるTen-Eleven-Translocationタンパクの機能解析> 3世代スクリーニング法により、ゲノムDNA脱メチル化が異常になる新規変異体の探索を計画しているが、F2ファミリーが育ち、スクリーニングが行えるまでには時間がかかる。本研究ではゲノムDNA脱メチル化機構の解明を目標としているが、非常に最近Ten-Eleven-Translocation(Tet)タンパクが、5―メチルシトシン(5mC)から5―ヒドロキシメチルシトシン(5hmC)を介してゲノムDNA脱メチル化を制御している可能性が示唆されてきた。そこで私は、ゼブラフィッシュのTet遺伝子をクローニングし、モルフォリノアンチセンスオリゴを用いたノックダウン実験を計画している。ゼブラフィッシュにはTet1,2,3の3種類の遺伝子が存在することがデーターベースの解析により明らかになったため、現在それぞれの遺伝子をクローニングしている段階である。今後、発生過程におけるTet1,2,3遺伝子の発現解析や5hmC抗体を用いた5hmC量の変化を調べる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゼブラフィッシュを実験動物として、ゲノムDNA脱メチル化が異常になる新規変異体の探索を行い、遺伝学的にゲノムDNA脱メチル化機構を明らかにすることが、本研究の目的である。ゼブラフィッシュは変異体の作製・スクリーニングが可能であるが、実際の実験作業は非常に大変であり、多くの労力を必要とする。その労力を出来る限り少なくするため、トランスポゾンTol2により挿入変異体を作製する手法を用いて、スクリーニングを開始している。本研究課題期間内に変異体を単離・解析するという点において、おおむね順調に進展していると考えている。 最近1~2年の間に、Tetタンパクが5hmCを介したゲノムDNA脱メチル化に機能することを示唆する結果が数多く報告され、非常に注目を集めている。そこで、本研究においても、ゼブラフィッシュを用いて、発生過程におけるTetタンパクのゲノムDNA脱メチル化への関与に関して解析を開始した。ゼブラフィッシュのTet遺伝子もマウスと同様に3種類確認され、互いに機能が重複している可能性が予想される。そのため、モルフォリノアンチセンスオリゴによるノックダウンが容易なゼブラフィッシュを用いる事によって、多重ノックダウン胚が作製可能となり、Tetタンパクの機能を明らかにすることが出来ると考えている。本研究は、当初の研究計画に無かったものであるが、本研究課題の目的に合致するものであり、現在のTetタンパクの研究進展状況を考えると当然実験を進めるべき課題であると考えている。また、現在発生過程におけるTet遺伝子の発現、5hmC, 5mC量の変化の解析を進めており、本研究も順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」や「現在までの達成度」にも記載したが、化学変異原ENUを用いた変異体作製は非常に多くの労力を必要とし、研究実施期間である3年では十分スクリーニングを行う事が困難であると考えられた。そこで、新たなスクリーニング方法として、トランスポゾンTol2を用いて挿入変異体を作製する事を計画している。この方法では、変異体の作製方法が非常に容易であること、また、EGFP蛍光を見ることにより、異常が生じる組織・器官を予測できることなど、非常に多くのメリットがある。本研究計画では、トランスポゾンTol2による変異体作製・スクリーニングを推進する。 また、「研究実績の概要」や「現在までの達成度」に記載した様に、変異体作製・スクリーニングの空き時間を利用して、発生過程におけるTet遺伝子の機能解析を現在行っている。マウスES細胞等を用いた数多くの解析結果より、Tet遺伝子がゲノムDNA脱メチル化を制御している可能性が強く示唆されてきた。私は、マウス胚よりゼブラフィッシュ胚を用いた方が、より簡便に生体内でのTetタンパクの機能を明らかにすることが出来ると考えている。もし、TetタンパクとゲノムDNA脱メチル化との関連が解明できれば、本研究目的の一端を達成することが出来ると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
以下の項目に関して、研究費を使用する予定である。1.変異体作製・スクリーニングに必要な消耗品2.ゼブラフィッシュTet遺伝子に対するアンチセンスモルフォリノオリゴの作製費用3.5hmC, 5mCの抗体及び2次抗体の費用その他、実験に必要なプラスチック製品・分子生物学的試薬・化学試薬など、ほぼ全てを消耗品に使用し、研究課題を推進する予定である。
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