研究課題/領域番号 |
23616003
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
菅野 雅元 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40161393)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | エピジェネティックス / 胸腺内T細胞分化 / ポリコーム蛋白質複合体 / 国際情報交流 / 英国・スイス / lncRNA / 胸腺上皮細胞 |
研究概要 |
研究計画(H23年度)に記載した内容3項目;(1)ポリコーム蛋白質複合体の精製、(2)PcG遺伝子群の組織特異的KO(conditional Knock-Out)マウスの作成、(3)non-codingRNAの検索、この中で(2)(3)は順調に研究計画が推移している。しかし(1)が難航しており、さらに研究内容に関し批判をいただいている状況で、この部分に関しては根本的な再考が必要と思われる。(2)に関しては、現在、eed-cKOはキメラマウスまで出来ている状況、mel-18-cKOはES細胞樹立まで出来た状況で、これからmicro-injectionを行う段階である。また、Ezh2-cKOは譲渡していただけることになった。また脱ユビキチン化酵素のcKOも検討している。胸腺での正負の選択に関する事を検討するためにH-Y Tg, OT-1 Tgなどを含めいくつかのTCR Tgを譲渡していただく考えである。(3)に関しては、「研究目的」にも記載した様に、Bmi-1KOマウスの研究から、Tリンパ球においてはp19Arf依存性であるが、胸腺上皮細胞ではp19Arf非依存性であった事から、同じBmi1KOの胸腺内において、T細胞と胸腺上皮細胞(TEC)におけるエピジェネティック制御ネットワークが異なる事が考えられた。その標的遺伝子特異性(依存性)の差異を説明する可能性の一つがlong-noncoding RNA(lncRNA)である。PRC1/2蛋白質複合体と結合するlincRNAの中の一つがANRILでありINK4b-ARF-INK4a遺伝子座のantisense orientationから転写される事が最近発見された。現在、まだ初期確認段階であるが、胸腺内のリンパ球でのみ発現しており、TECでの発現は我々の手では確認できていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の様に(2)(3)はほぼ予定どおりに目標を達成できているが、(1)が達成できていないし、実験デザインに対する批判を受けており再考の余地があると考えている。批判を受けながら予定通り進むよりは、情報収集に勤め再考した方がより当初の研究目的に沿った形になると考えている。PRC1複合体については、我々を含めいくつかのグループがmel-18を含む物とbmi1を含むアイソフォームの存在を確認してきた。さらに最近、Cellに、RYBPを含む複合体とCBX7を含む複合体の2種類の存在が報告され、PRC1複合体の種類が増加中である。しかし最大の批判は、「いくらリンパ球細胞株を用いて蛋白質複合体の精製を行っても、自然な胸腺内リンパ球とは異なり、分化・成熟が出来ない不死化した細胞であり、そこから蛋白質複合体を精製しても正常を反映していないのでは意味が無いのではないか」、という意見である。現在、PcGの発現ベクター(またはshRNA発現ベクター:レトロウイルス、またはレンチウイルス)を用いて、FTOCではなくRTOCを用いて細胞分化解析、single cell程度のごく少数の細胞による蛋白質解析技術の導入・共同研究を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
上記のような胸腺培養法などの新しい技術導入のため、研究室の助教を4ヶ月間、((Birmingham大学・英国、Basel,・スイス/Oxford大・英国)に短期留学させ、さらに共同研究を行う予定にしている。(1)に関しては情報収集・新技術導入・共同研究推進に勤め、(2)、(3)は現状のまま続行する予定である。特に(3)に関しては助教帰国後RTOC等を用いて新しいアプローチも試みる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き、ほとんどが、消耗品、国内旅費、論文投稿料、などに使用予定であり、高額備品を購入する予定は今のところ無い(もし有るとすれば、顕微鏡の対物レンズ、水銀ランプ代、など)。 また、論文投稿料は当初の予定の10万円を超える可能性が高い。
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