研究概要 |
本研究の当初の目的は下記の3点であった。 (1)ポリコーム蛋白質複合体の精製、(2)PcG遺伝子群の組織特異的KO(conditional Knock-Out)マウスの作成、(3)long non-codingRNAの検索、 研究目的(1) に関しては、当初考えていたよりもポリコーム蛋白質複合体が、よりheterogeneityに飛んでいる事が分かって来た。PRC1タンパク質複合体を分類すると、PRC1.1 からPRC1.6までの6種類の複合体が存在する。さらにmel-18(PCGF2)を含む複合体PRC1.2においても、CBXsを含む複合体と、その代わりにRYBPを含む複合体との間に動的平行関係が存在する事が判明して来た。その結果、未熟胸腺細胞DN1とDN3を材料とし、PRC1タンパク質複合体のheterogeneity(特にPRC1.2とPRC1.4の比較)を検討した結果、DN1ではPRC1.2が優位、DN3ではPRC1.4が優位であり、細胞分化段階ごとにPRC1.2/PRC1.4のバランスが変化する事が分かった。その事が、対応する標的遺伝子群のスペクトラムの変化に反映されると考えられた。研究目的(2)PcG遺伝子群の組織特異的KO(conditional Knock-Out)マウスは、当初の目的の、floxed-mel18, 以外にfloxed-eed, floxed-ezh2, などを作成できた。現在、組織特異的Cre-TgマウスとしてLck-Cre Tg, CD4-Cre-Tg, FoxN1-Cre Tg, Mx-Cre Tgマウスとの交配を行っており、結果が出てきている。さらにERT-Cre マウスも用いて解析を行っている。研究目的(3)long non-coding RNAの検索:最近、PRCタンパク質複合体にlong non-coding RNA(lncRNA)が結合し、標的遺伝子特異性に関与している事が分かってきた。その中の1例がANRILでありINK4a遺伝子座にあるanti-senseRNAである。実際にDN1やDN3分画でPRCタンパク質複合体と一緒に結合しているRNAを検索した結果ANRILのマウス版に対応するincRNAを検出できた。
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