研究概要 |
大腸癌におけるHOPXの治療標的の可能性につき検討をすすめている。HOPX遺伝子発現株をDLD1,HCT116を用いて作成し下流の変化を検索した。Affymetrix microarrayを用いて下流遺伝子を検索し、RT-PCRで検討した結果、最も大きく変化する遺伝子としてEphA2,Cyr61が同定された。今回、 HOPX 遺伝子導入株で EphA2の発現を RT-PCRで調べたところ DLD1, HCT116の両方の株で EphA2の発現が低下していることが確認された。このことは、大腸癌において HOPX のメチル化により HOPXの発現が低下することが、EphA2増強に関わっていることを示唆するものであり臨床検体での確認が必要と考えた。 大腸癌ではHOPXのメチル化は未分化型とよく相関し未分化型大腸癌の特徴ともいえると考えられたため、EphA2に特に注目した。というのもEphA2は大腸癌にとどまらずほかの癌でも未分化型癌の特徴とされているとする報告が多いからであった。われわれの検討の結果、未分化大腸癌ではEphA2の発現が高い傾向にあった。EphA2発現の陽性率は、未分化・中分化・高分化癌でそれぞれ21例中15例、20例中12例、20例中6例であり、発現の割合は分化型により有意な差を認めた (p=0.0083)。次に21例の未分化癌の HOPXメチル化レベルと EphA2の発現についての相関を調べた。EphA2の発現は HOPX メチル化高値例の半分の症例 (n=11)で高発現を示し、HOPX メチル化低値例では2例のみ高発現を示した。このことは予後不良な未分化大腸癌では HOPXのメチル化が高頻度に生じており、それが EphA2の発現上昇と関わっていることを示唆するものである。 以上の結果から予後不良の大腸癌における治療標的として EphA2に注目することが重要と考えた。今後、未分化大腸癌における EphA2治療標的の可能性について更なる検討を行いたい。
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