植物のエピジェネティク制御によるゲノムの転写調節では、DNAのシトシンやヒストン、さらに24塩基のsiRNAなどへのメチル基の修飾が重要な役割を果たすことが知られている。それらに対するメチル基の付加には、それぞれに対するメチル基付加酵素に加えて、メチル基供与体の基質としてS-アデノシルメチオニンが使われるが、これまでの植物におけるエピジェネティク制御に関する研究からは、S-アデノシルメチオニンがエピジェネティク制御にどの様に関わっているかは明らかになっていない。本研究では、S-アデノシルメチオニンの代謝がエピジェネティク制御に関わっているか、また、もし関わっているのであればどのように関わっているかについて解明することを目的に行った。 その目的のためにS-アデノシルメチオニン代謝異常変異体とddm1やnrpd1などのエピジェネティク制御の変異体を組み合せたと二重変異体を作製し、トランスポゾンMRU1やその他のトランスポゾンの転写を調べた。その結果、それらの二重変異体ではMRU1ともう1つのトランスポゾンの転写が上昇していることがわかった。このことから、S-アデノシルメチオニン代謝とエピジェネティク制御の関連が遺伝学的明らかになった。また、MRU1転写開始点及び終結点を調べるために、5’RACEと3’RACEを行った。その結果、データベース上にはない転写ユニットは見られず、ノーザン解析で得られたMRU1に相当するバンドが不鮮明な原因は明らかにできなかった。
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