研究課題/領域番号 |
23616009
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター) |
研究代表者 |
小田 尚伸 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, その他 (30295133)
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研究分担者 |
中別府 雄作 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30180350)
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キーワード | エピジェネティクス / 染色体 / ヒストン / メチル化 |
研究概要 |
真核細胞の染色体を構成するヒストン蛋白質は種々の翻訳後修飾を受ける。これらの修飾は染色体の最小基本単位であるヌクレオソームの可動性や相互作用に影響を与え、あるいはその修飾を特異的に認識する蛋白質の動員を惹起する。これによって染色体は構造変換を受け、DNAの複製、転写、修復といった種々の細胞機能の調節に影響する。 近年ヒストンのメチル化および脱メチル化酵素が数多く報告され、その部位特異的な修飾と細胞機能との関連が注目を集めている。ヒストンのメチル化はその修飾部位の違いだけでなく、同一部位の異なるレベルのメチル化が別の細胞機能に関わることが知られている。なかでもヒストンH4リジン20残基 (H4K20)のメチル化は細胞周期の中で動的に制御されていることが特徴である。哺乳類では主にPR-Set7/set8, Suv4-20h1, Suv4-20h2の三つの酵素が異なるレベルのメチル化を制御し、これが細胞周期を制御する上で極めて重要であることが、我々を含むグループの研究から明らかになった。 H4K20メチル化ペプチドを用いた細胞内結合蛋白の検索により複数のDNA複製起点を認識する複合体ORCの関連蛋白質が同定された。ヒストンメチル化とDNA複製開始機構の密接な関連が示唆された点に着目し、我々はsuv4-20hsと呼ばれるジメチル、トリメチル化酵素の欠損細胞を用いた解析を行い、その解析結果をGenes and Developmentに公表することができた。 また転写調節におけるH4K20メチル化の機能を明らかにする目的で、種々の条件特異的遺伝子マウスを作成している。これまでに皮膚特異的に発現を欠損するマウスを作成することに成功し、PR-Set7/set8が胎生期および成体において皮膚の発生および維持において果たす機能を解析し、EMBO Journalに論文として公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒストンメチル化とDNA複製の関連についてはsuv4-20hsと呼ばれるジメチル、トリメチル化酵素の欠損細胞を用いた解析を行い、その解析結果をGenes and Developmentに公表することができた。また条件特異的遺伝子マウスを用いて皮膚特異的にPR-Set7/set8の発現を欠損するマウスを作成することに成功し、胎生期および成体における皮膚におけるPR-Set7/set8遺伝子の機能についての解析結果をEMBO Journalに報告することができた。さらにヒストンH4リジン20残基(H4K20)のメチル化と哺乳類におけるPR-Set7/set8の機能について、これまでの我々の研究成果および現時点で公表されている他施設の結果をもとに、世界における研究の現状を考察し総説としてGenes and Developmentに発表した。
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今後の研究の推進方策 |
H4K20メチル化が細胞内で複製および転写という基本的な細胞機能と如何に関わっているかという点に注目した解析を行っているが、神経細胞などの終末分化した非複製細胞においてH4K20のモノメチル化の状態が遺伝子発現にどのように影響を受けるかという点での解析がまだ進んでいないので、今後注力していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウスの維持および交配、および解析に必要な費用に充当する。 海外研究者との研究打ち合わせおよび学会発表の旅費に使用する。 実験に必要な試薬、機器の購入に使用する。
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