研究概要 |
真核細胞の染色体を構成するヒストン蛋白質は種々の翻訳後修飾を受ける。これらの修飾は染色体の最小基本単位であるヌクレオソームの可動性や相互作用に影響を与え、あるいはその修飾を特異的に認識する蛋白質の動員を惹起する。これによって染色体は構造変換を受け、DNAの複製、転写、修復といった種々の細胞機能の調節に影響する。 近年ヒストンのメチル化および脱メチル化酵素が数多く報告され、その部位特異的な修飾と細胞機能の関連が示されている。また同一部位でも付加されるメチル基の数の違いにより異なる細胞機能に関わることが知られている。ヒストンH4リジン20残基 (H4K20)のメチル化は細胞周期の中で動的に制御されていることが特徴であり、哺乳類では主にPR-Set7/set8, Suv4-20h1, Suv4-20h2の三つのメチル化酵素がこれに関わっている。 本研究においてはH4K20メチル化ペプチドを用いた細胞内結合蛋白の検索によりDNA複製起点を認識する複合体ORCの複数の関連蛋白質を同定した。これよりヒストンメチル化が複製起点の認識部位として機能している可能性が示唆された。 細胞周期同調後のPR-Set7の機能喪失により、S期進行阻害が観察されることとあわせてヒストンメチル化とDNA複製開始機構の密接な関連が示唆され、一連の解析結果をGenes and Development誌に報告した。さらにPR-Set7を皮膚特異的に欠損するマウスを胎児期と成体で作成し、いずれにおいても皮膚の発生や分化にH4K20のメチル化が重要な役割を果たしていることを明らかにした。本解析結果はEMBO Journal誌に論文として公表した。
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