研究課題/領域番号 |
23617002
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
蕪山 由己人 宇都宮大学, 農学部, 教授 (20285042)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | コラーゲン / 栄養生理 / 組織再生 / 抗酸化 |
研究概要 |
コラーゲンは動物の細胞外マトリックスの成分として,全タンパク質の約25%を占める主要タンパク質である.近年の健康食品・サプリメントブームの中でコラーゲン関連商品の数は非常に多く,老化に伴う皮膚や関節の機能低下を改善する効果が謳われている.しかし,摂取したコラーゲンが,実際にどのようなメカニズムで標的とされる組織において生理作用を発揮するのか,分子レベルでは不明な点が多い.サプリメントとして使用されるコラーゲンペプチド(ゼラチンの限定分解産物,様々なペプチドの混合物)の効能についても,機能性ペプチドが同定されていないなど,解析すべき課題は多い.本研究ではこのような状況を踏まえ,コラーゲンやその限定分解産物を摂取した際の生理効果について特に皮膚の再生に与える影響と,抗酸化効果について分子レベルで詳細な解析を行い,効果的なコラーゲンの利用について基盤情報を提出することを目的とした.皮膚の再生モデル実験系においては,以前よりコラーゲンペプチドを摂取することにより,再上皮化に重要な役割を果たすマトリックスメタロプロテアーゼ9(MMP9)の有意な発現亢進を確認していた.今回免疫染色法により解析を進めたところ,再上皮化の主体となる真皮と表皮の境界領域に局所的にMMP9の発現亢進が認められた.更に,培養細胞を用いた実験で,メラノサイト細胞においてコラーゲンペプチド依存的にMMP9の発現亢進が確認された.この結果は,摂取コラーゲンが皮膚の再生を促進する効果があることを分子レベルで示唆した数少ない結果である.更に,合成ペプチドを用いた電気化学的解析と生化学的な解析により,コラーゲンのアミノ酸配列中に多く認められるトリペプチドに,非常に強い脂質酸化抑制作用があることが判明した.これらの結果を基に,今後より具体的な分子メカニズムを明らかにする.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コラーゲンの皮膚再生に与える影響の解析については,当初計画通りの進行状況であり,免疫染色法により,生理作用の局在を明らかにした.また,具体的な標的細胞についても培養細胞を用いた実験により,メラノサイトにMMP9の発現亢進を確認しており,当初計画より進行は速い.抗酸化ペプチドの探索については,非常に強い抗酸化性を有するトリペプチドの探索に成功しており,現在細胞生物学的な解析を始めており,当初計画より進行は速い.コレステロール低減作用については,栄養試験後の,各種リポプロテインのHPLCによる定量実験系の構築を行っており,解析途中である.以上より,全体として,おおむね順調であるとあ判断する.
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今後の研究の推進方策 |
研究全体が初年度としては,おおむね計画通り進行しているため,当初計画通り研究を遂行する.皮膚の再生効果については,培養細胞による解析を進めると共に,炎症性サイトカインへの効果も検証し,より効果的なバイオアッセイ系の構築を目指す.抗酸化ペプチドの探索については,有効なペプチドの同定に至ったので,細胞レベル,実験動物レベルでの有効性検証を行う.コレステロール低減作用については,各種リポプロテインの定量系を確立し,できるだけ早期に標的組織の同定を目指す.
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次年度の研究費の使用計画 |
いずれの解析においても実験動物による解析が必要なため,その購入費用を必要とする.また,コレステロール動態解析においては,リポプロテインのポストカラム解析の為,コレステロール検出用の試薬を中心とした一般試薬を必要とする.さらに培養細胞を用いた解析にシフトしてゆくため,培地,培養器具等の消耗品の購入を必要とする.
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