研究概要 |
哺乳動物では必須脂肪酸が欠乏すると、ミード酸(20:3n-9)と言われる脂肪酸が増加することが知られている。昨年度、必須脂肪酸欠乏時のオレイン酸(18:1n-9)からミード酸産生遺伝子がFads1, Fads2, Elovl5であることを明らかにした。そこで本年度は、必須脂肪酸欠乏時における産生遺伝子の発現変化について、培養細胞と必須脂肪酸欠乏モデルマウスを用いて検討した。 培養細胞は培養時間とともにミード酸が増加し、多価不飽和脂肪酸が減少することで必須脂肪酸欠乏状態が亢進する。そこで培養時間に伴うミード酸産生遺伝の発現量の変化を調べたところ、Fads1, Elovl5の発現が増加していた。また、ミード酸の前駆物質であるオレイン酸の合成酵素SCDの発現も培養時間とともに増加していた。4週間の無脂肪食を与えた必須脂肪酸欠乏マウスの肝臓についても、Fads1, Fads2, Elovl5の発現とSCDの発現が増加していたことから、必須脂肪酸欠乏時にはミード酸の合成が遺伝子レベルで増加することが分かった。 また必須脂肪酸を含めたPUFAは、その多くがリン脂質に存在することが知られている。そこで、必須脂肪酸欠乏マウスにおける各臓器(血漿、肝臓、腎臓)の多価不飽和脂肪酸分布の変化を調べた。まず各臓器のリン脂質のミード酸分布について、必須脂肪酸欠乏時のミード酸はホスファチジルイノシトールに極めて多く分布していた。また他の多価不飽和脂肪酸はホスファチジルコリンにおいて減少が大きいが、ホスファチジルセリンなどは多価不飽和脂肪酸の減少がほとんど見られなかった。これらの結果より、必須脂肪酸欠乏では各リン脂質における多価不飽和脂肪酸の必要性が異なることが示唆された。
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