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2011 年度 実施状況報告書

エキソソーム構成成分の網羅的解析によるスフィンゴ脂質の新たな栄養機能の実証

研究課題

研究課題/領域番号 23617005
研究機関東京農工大学

研究代表者

三浦 豊  東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10219595)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードエキソソーム / スフィンゴミエリン / miRNA / ガングリオシド / 肝癌細胞
研究概要

スフィンゴ脂質がエキソソーム分泌への影響を介してその生理作用を発揮している可能性を明らかにするため、本年度は主としてヒト肝癌細胞(HepG2)を用いた解析を実施した。スフィンゴミエリンを培地に添加し、あらかじめ肝癌細胞に取り込ませるとHepG2の増殖が抑制され、細胞死が誘導されることを見出している。誘導される細胞死はアポトーシスではなくネクローシスであることも見出した。またスフィンゴミエリン添加後の細胞を無血清培地で培養した馴らし培地を無処理の肝癌細胞に添加するとやはり増殖が抑制されることを確認し、スフィンゴミエリンを取りこませた細胞が培地にエキソソームを分泌し、そのエキソソームを介した作用が観察されるうることも確認できた。現在、馴らし培地より市販のエキソソーム調製試薬を用いてエキソソームを分離し、その分析を進めている。エキソソームマーカーであるテトラスパニンタンパク質CD9は検出されているが、その他の膜たんぱく質を検出するためにはより多くのエキソソームを調製する必要があるため、現在その準備を行っている。同様にエキソソームに含まれるmiRNAの網羅的分析についても十分な量の材料を調製した後に実施する計画である。Caco-2細胞に関する検討は未実施であり、次年度の検討課題となっている。 もう一つのスフィンゴ脂質であるガングリオシドについては、メラノーマ細胞を用いた検討を進めた。当初はメラノーマの使用は想定していなかったが、ガングリオシドがメラノーマに対してより顕著な生理作用を発揮したため、こちらの解析を進めた。その結果、GM3およびGD3を取りこませた細胞の馴らし培地に細胞増殖抑制作用があることを見出した。分泌されたエキソソーム中のmiRNAによる作用が予想されるため、現在分析用のエキソソームを大量調製している段階である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

実績概要に記載のように、肝癌細胞においてスフィンゴミエリンがエキソソーム分泌への作用を介して、その生理作用を発揮している可能性を明らかにし、その作用の詳細の解析は実施済みである。しかし、当初計画していた分泌されたエキソソームの網羅的分析は未実施である。その理由はマーカータンパク質のように比較的多く含まれる膜たんぱく質については容易に検出することができたが、網羅的解析を実施するためにはより多くの材料が必要であり、その調製に予想以上の時間を要しているためである。またガングリオシドが肝癌細胞に対して明確な生理作用を示さなかったことから、より顕著な生理作用が観察される細胞培養系を探索する時間が必要となり、実際に他の肝癌細胞、大腸がん細胞、肺がん細胞、メラノーマ細胞を用いた検討を実施し、多くの時間を費やすこととなった。その結果、ガングリオシドについては当初の計画にはなかったメラノーマ細胞を使用した解析を行うこととなったが、ガングリオシドがエキソソームを介して生理作用を発揮しうる実験系を見出せたことから、今後の進捗に資する点は大きいと考えている。これらの検討に時間を要したため、小腸上皮細胞モデル系であるCaco-2細胞での検討には着手できていない。これらの理由から研究計画は当初の予定よりもやや遅れていると判断したが、問題点が解決できたため、次年度以降は当初計画をスムーズに進めることができると判断している。

今後の研究の推進方策

今後は現在調整している肝癌細胞由来のエキソソームを用いて膜たんぱく質の網羅的解析を速やかに実施し、スフィンゴミエリン添加によりエキソソーム膜たんぱく質の組成に変化があるかどうかの確認を行う。またエキソソームを介して肝癌細胞にネクローシスが誘導されている可能性を見出しているため、細胞増殖および細胞死に関わるmiRNAの存在をRT-PCRにより明らかにする計画である。具体的には大量調製したエキソソームよりRNAを分離し、常法に従いRT-PCRを行うと同時に、市販のmiRNAプロファイリングキットを利用して、エキソソームに含有されているmiRNAを網羅的に検出し、スフィンゴミエリン添加の有無により含有されるmiRNAの量、質が変化しているかどうかを検討する計画である。同様の解析をガングリオシド添加メラノーマ細胞由来のエキソソームについても実施する計画である。 また未実施であり、当初計画の達成度を低くする原因となったCaco-2細胞についても、速やかにスフィンゴミエリン添加、ガングリオシド添加実験を行い、分泌されたエキソソームの分析を行う計画である。その際Caco-2細胞は他の細胞と異なり、極性を有した細胞であるため、当初の計画の通りカルチャーインサートを用いた培養を行い、apical側とbasolateral側の培地を分けてサンプリングし、それぞれのエキソソーム組成を解析する計画としている。

次年度の研究費の使用計画

計画の遅れにより使用できなかった研究費と次年度配分予定の研究経費を合わせて使用する。研究計画の欄に記載のように、その多くは物品費(消耗品費)に充当する。研究の遂行に欠かせない、エキソソーム調製用試薬が多く必要となり、またmiRNAプロファイリングキットも数回購入する必要がある。細胞培養用の試薬類も必要となるため、80%程度を消耗品費に充当し、旅費と投稿料などその他の経費にそれぞれ10%ずつ充当することを計画している。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Anti-invasive activity of α-tocopherol against hepatoma cells in culture via protein kinase C inhibition.2011

    • 著者名/発表者名
      Yoshida S, Hirakawa N, Ito K, Miura Y, and Yagasaki K
    • 雑誌名

      J. Clin. Biochem. Nutr.

      巻: 48 ページ: 251-257

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Splicing factor 2-associated protein p32 participates in ribosome biogenesis by regulating the binding of Nop52 and fibrillarin to preribosome particles.2011

    • 著者名/発表者名
      Yoshikawa H, Komatsu W, Hayano T, Miura Y, Homma K, Izumikawa K, Ishikawa H, Miyazawa N, Tachikawa H, Yamauchi Y, Isobe T, and Takahashi N
    • 雑誌名

      Mol. Cell. Proteomics

      巻: 10 ページ: in press

    • DOI

      M110.006148. Epub. Ahead, May 2

    • 査読あり
  • [学会発表] Regulation of mouse melanoma invasion by membrane GM32012

    • 著者名/発表者名
      及川洋祐、矢ヶ崎一三、三浦豊
    • 学会等名
      日本農芸化学会2012年度大会
    • 発表場所
      京都女子大学
    • 年月日
      2012-03-25
  • [学会発表] 低酸素条件下におけるマウスメラノーマ細胞悪性化の機構解析2011

    • 著者名/発表者名
      佐藤 直也、三村 真吾、矢ヶ崎 一三、三浦 豊
    • 学会等名
      日本動物細胞工学会2011
    • 発表場所
      東京大学山上会館
    • 年月日
      2011年7月22日

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公開日: 2013-07-10  

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