研究課題
まず第1に、主に中国において健康飲料として用いられてきたプーアル茶の骨格筋代謝活性化作用を検討した。ラット単離骨格筋インキュベーション系において、プーアル茶水溶性抽出物はAMPキナーゼ活性に変化を与えない一方で、インスリンシグナルを用量・時間依存的に急性的に活性化した。HPLC解析上、水溶性抽出物の主要成分は没食子酸であったが、実際、没食子酸はインスリン非依存的にインスリン受容体基質IRS1-PI3キナーゼ-Akt系を活性化し、糖取り込みを促進した。以上より、プーアル茶による骨格筋代謝活性化の有効成分として没食子酸の可能性が示唆された。第2に、赤ワインなどに含まれるポリフェノールであるレスベラトロールについて、ラット単離骨格筋インキュベーション系を用いて検討した。レスベラトロールはAMPキナーゼを用量・時間依存的に急性的に活性化した。しかしその一方で、レスベラトロールはインスリンシグナルを顕著に抑制し、インスリンによる蛋白質合成促進及びグリコーゲン合成促進を減弱した。以上より、レスベラトロールが骨格筋AMPKの活性化とインスリン拮抗作用を併せ持つことが示唆された。なお、レスベラトロールはインスリン受容体脱リン酸化酵素PTP1Bの活性には影響しなかった。第3に、ラット単離骨格筋インキュベーション系を用いてAMPキナーゼ活性化剤AICARを骨格筋に作用させ、骨格筋内に生じる代謝的変化をメタボローム解析にて検討した。その結果、糖代謝や核酸代謝に関連する分子を中心に、AICAR刺激と筋収縮が類似した代謝動態変化を引き起こすことが示された。没食子酸やレスベラトロール及びこれまでの研究で骨格筋への代謝的影響を検討してきた化合物(カフェイン、カフェ酸など)についても、メタボローム解析を用いて筋収縮やインスリン刺激との比較検討を行うことの有用性が示唆された。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 1件) 図書 (2件) 備考 (1件)
J Phys Fitness Sports Med.
巻: 3 ページ: 55-64
10.7600/jpfsm.3.55
Am J Physiol Cell Physiol.
巻: 305 ページ: C1214-C1422
10.1152/ajpcell.00162.2013
Nutrition
巻: 29 ページ: 549-555
10.1016/j.nut.2012.09.007
http://www.hayashilab.org/