糖尿病や脂質異常症、高血圧などの生活習慣病の中心に肥満があると考えられ、肥満解消は生活習慣病の予防につながると期待される。本研究は、肥満誘発マウスにおいて抗肥満作用を示した植物乳酸菌Pediococcus pentosaceus LP28(LP28)について、その作用のメカニズムの解明、およびヒトにおける効果の検証を目的として実施した。 マウス肝由来の細胞株を用いたin vitro実験では、LP28添加により細胞内への脂肪の蓄積が抑制され、その際、不飽和脂肪酸の合成に関与するSCD1の発現が低下していることを確認した。また最終年度に実施した肥満誘発マウスを用いた動物実験では、LP28投与マウスの白色脂肪におけるacc1(脂肪酸合成に関与)のmRNAの発現量がコントロール群と比較して有意に低下していること、さらに、肥満との関連が報告されているtlr5の腸粘膜細胞における発現量がLP28投与によって特に変化しないこと等を見出した。 また、本研究の要であるヒト試験(二重盲検法による無作為化並行群間比較試験)を平成24年度後半~25年度に実施した。20~70歳でBMI 25~30 kg/m2の男女62名を対象とし、LP28生菌、LP28死菌、あるいはプラセボのいずれかを12週間摂取させた。その結果、BMI、体脂肪率、腹囲、LDLコレステロール、およびLDL/HDL比が、プラセボ群と比較してLP28死菌摂取群で有意に低下していた。一方、LP28生菌摂取群においては、体重や体脂肪量等に低下傾向が認められたものの、その程度はLP28死菌群には及ばなかった。以上のように植物乳酸菌LP28がヒトにおいても抗肥満作用を有することが示されたことから、LP28は、生活習慣病のリスク因子である肥満を抑制することによって、メタボリックシンドロームを予防・改善する一助となり得ることが示唆された。
|