研究課題/領域番号 |
23617014
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研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
海野 けい子 静岡県立大学, 薬学部, 准教授 (10106437)
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研究分担者 |
杉浦 実 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹研究所, 主任研究員 (10355406)
小西 智一 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (00281650)
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キーワード | 脳 / 老化 / 酸化ストレス / 社会心理的ストレス |
研究概要 |
本研究は「脳の老化とその予防」に焦点を当て、脳機能低下抑制作用を有する食品成分を中心とした有効成分を探索し、それら作用機序を分子レベルで解明することを目的としている。これまでに下記に示す3つの研究項目を柱として研究を進めてきた。1. 抗酸化物質摂取による脳機能低下抑制作用の解明 2. 社会心理的ストレス負荷による脳の老化促進作用の解明 3. 抗ストレス作用物質の探索と脳機能低下抑制作用の検討 その結果、抗酸化物質として緑茶カテキンに着目して進めた研究では、緑茶カテキン中に含まれるカテキン分子の中でエピガロカテキンガレート(EGCG)には学習記憶能低下を抑制する作用が認められたが、エピガロカテキン(EGC)には作用がほとんど認められなかった。カテキン分子の生体における作用の違いの一因として、抗酸化作用および生体膜との相互作用に違いがあることが見出された。現在、緑茶カテキンおよびミカンに含まれる抗酸化物質の一つであるβ-クリプトキサンチンについて、それらを摂取していたマウス脳内の遺伝子発現の変化について、共同研究者の小西とともに解析を進めている。ストレスに関する研究では、抗ストレス作用を見出したテアニン(緑茶中のアミノ酸)について、副腎を中心とする生体のストレス応答について検討した成果を論文として発表した(Exp. Physiol., 98, 290-303, 2013)。現在さらにテアニンの脳内での作用機作に関する検討を進めている。また新たな抗ストレス作用物質としてセサミンの有用性を見出したことから、脳に対する作用の検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に下記研究を計画し、概ね順調に進展し良い成果を得ることができた。(1)緑茶カテキン:DNAマイクロアレイの解析を共同研究者の小西とともに行い、候補となる標的遺伝子をある程度絞り込んだ。またアルツハイマー病モデルマウス(SAMP8)を用い緑茶カテキン摂取の効果検討を行っている。(2)β-クリプトキサンチンについてDNAマイクロアレイの解析を共同研究者の小西とともに行い、候補となる標的遺伝子をある程度絞り込んだ。(3) 神経新生に対するストレスの影響を検討している。(4)新たな抗ストレス作用物質としてセサミンが有望であることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度および24年度に得られている研究成果をふまえ、最終年度である今年度にこれまでの成果の集大成を行う。(1)緑茶カテキンおよびβ-クリプトキサンチンについて、脳内の標的となる遺伝子を明らかにし、これらの脳内における作用機構について新たな作用メカニズムに関する考えを示す。(2)テアニンについて、脳内の標的となる遺伝子を明らかにし、これらの脳内における作用機構について考えを示す。(3)セサミンについて、その抗ストレス作用を明らかにする。 これらの研究成果を総括し、脳機能低下抑制作用を有する食品成分を明らかにするとともに、その作用機作に関する新たな考えを示す。得られた成果を論文・学会等で発表し、高齢者の脳の健康維持・亢進に寄与する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の予算として80万円を予定している。その内訳は、実験動物や試薬類等の購入として消耗品費50万円、学会参加等の旅費10万円、論文校正等の費用としての謝金10万円、投稿料等のその他の経費として10万円を予定している。また、研究分担者の小西(秋田県立大学)の24年度の分担経費が一部繰り越されている。これは研究の進展が予定より遅くなったことによるが、25年度に使用する予定である。
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