研究課題/領域番号 |
23617017
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
西川 禎一 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (60183539)
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研究分担者 |
小西 洋太郎 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 教授 (70116812)
菊崎 泰枝 奈良女子大学, 生活環境学部, 教授 (60291598)
乾 博 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (20193568)
高田 二郎 福岡大学, 薬学部, 教授 (90122704)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 線虫 / 乳酸菌 / 抗酸化物質 / 老化 / 生体防御 / 自然免疫 / 栄養 |
研究概要 |
本研究は、抗老化や免疫栄養(Immunonutrition)に有効な機能性食品因子をin vivo試験でスクリーニングするためのモデルとして線虫の可能性を検討し、栄養学、農学および薬学研究者の知識統合により、新たな機能成分の探索とその作用機構を解明することを目的とする。 23年度は、線虫を免疫栄養モデルとして確立するための経口投与法を完成させ論文発表した。さらに、この方法を用いて抗酸化性物質として知られる市販の各種化合物、分担研究者から提供された種々のポリフェノール重合体や漢方製剤から抽出精製した抗酸化物、また水溶性化処理を加えた脂溶性抗酸化物について線虫に対する効果を調べた。その結果、トコトリエノール、γ-トコフェロール、アスタキサンチン、コエンザイムQ10などが線虫に対して長寿効果を示した。ビフィズス菌は、その細胞壁とプロトプラストの両方に長寿効果を有する物質が含まれていた。 上記の抗老化物資の作用機構を探る目的で産卵能力や成長に与える影響を見たが、これを阻害する傾向は認められなかった。したがって、カロリー制限による寿命延長ではないと考える。物理化学的ストレスや感染ストレスに対する抵抗性を賦活し、運動性を保持する効果が認められるが、化合物の種類によってそれぞれ異なっていた。したがって、これらの長寿効果は異なる機構によると推察され、DNAマイクロアレイなどの分子生物学的解析を行ったところ、その効果が転写因子DAF-16に依存する物質と依存しない物質に大別された。 以上の成績は、抗老化食品因子や免疫栄養研究モデルとしての線虫の有効性を示しており、国際誌「Biogerontology」の総説で大きく取り上げられた(Ottaviani et al. 2011)。24年度には米国の学会にも招かれており、学術的に重要な成果として受け入れられつつものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書の23年度の計画では、(1)抗老化成分の探索、(2)老化指標の測定・比較、(3)作用機構の究明となっている。(1)については5種の抗酸化物質が線虫に対して長寿効果を発揮すること、乳酸菌の細胞壁と細胞質の両方に同様の長寿効果があることを発見した。(2)では老化指標の測定によって乳酸菌が線虫の老化を抑制して寿命延長していることを示唆し、(3)として計画通りDNAマイクロアレイによる解析を実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
上記のように23年度の計画が予定通り進行したので、申請書の24年度以降の研究計画に従って今後は長寿効果を有する化合物の探査を継続するとともに、先に発見した化合物が線虫の寿命を延長させる機構の究明を目指す。また、化合物を併用した場合の効果についても検討する。なお、研究分担者である福岡大学の高田教授が保有する脂溶性抗酸化物の水溶性誘導体については、線虫への経口投与用マイクロカプセルへの封入が困難なことが判明したため本実験系への適用を一旦中止することとした。
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次年度の研究費の使用計画 |
すべて物品費として支出予定。
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