研究課題
本研究は、抗老化や免疫栄養(Immunonutrition)に有効な機能性食品因子をin vivo試験でスクリーニングするためのモデルとして線虫の可能性を検討し、栄養学、農学および薬学研究者の知識統合により、新たな機能成分の探索とその作用機構を解明することを目的とする。24年度は、前年に開発した線虫のための経口投与法を用いて抗酸化性物質として知られる市販の各種化合物、分担研究者から提供された種々のポリフェノール重合体について線虫に対する効果を調べた。その結果、これまでに発見した乳酸桿菌、ビフィズス菌、δ-トコトリエノールやγ-トコフェロール、アスタキサンチン、セサミンの他に新たにナリンギン重合体が線虫に対して長寿効果を示した。しかしながら、再現性と安定性について検討の余地が残された。ビフィズス菌については、その細胞壁とプロトプラストの両方に長寿効果を有する物質が含まれていた。その作用機構をDNAマイクロアレイなどの分子生物学的解析により探ったところ、カロリー制限による寿命延長ではなく、転写因子のSKN-1を介して生体防御機構を賦活し長寿をもたらしていることが示唆された。しかし、その他の抗酸化化合物による寿命延長では、カルボニルタンパクやリポフスチンなど酸化ストレス指標で対照群との間に差が認められなかった。体外から投与した抗酸化物質は、むしろプロオキシダントとして酸化ストレスを与え、ホルミシス効果により寿命を延長しているものと推察される。以上の成績は、第2回モデル宿主国際会議でも評価され、Travel Awardを受賞した。米国の学会でも講演に招かれるなど、学術的に重要な成果として受け入れられつつある。
2: おおむね順調に進展している
申請書の24年度の計画では、①抗老化成分の探索、②老化指標の測定・比較、③作用機構の究明となっている。①については6種の抗酸化物質が線虫に対して長寿効果を発揮すること、乳酸菌の細胞壁と細胞質の両方に同様の長寿効果があることを発見した。②では、老化指標として運動性、カルボニル化タンパク、リポフスチン、生体防御機能を測定し、乳酸菌が線虫の老化を抑制して寿命延長していることを示す所見が得られた。③に関しては、DNAマイクロアレイやRT-PCRそして変異体を用いた解析を実施し、これまで発見した長寿効果を有する物質の多くがDAF-2やDAF-16あるいはSKN-1を介して効果を発揮していることを明らかにできた。
上記のように23~24年度の計画が予定通り進行したので、申請書の24年度以降の研究計画に従って今後は長寿効果を有する化合物の探査を継続するとともに、先に発見した化合物が線虫の寿命を延長させる機構の究明により多くの力点を置くこととする。レポーターアッセイなども既に一部実施したので、25年度は特に干渉RNA法による作用機構の探求に向けて予備実験を行い、26年度以降の研究へと繋げる準備とする。
該当なし
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)
Biogerontology
巻: 14 ページ: 73-87
10.1007_s10522-012-9411-6
日本食品微生物学会雑誌
巻: 30 ページ: 1-14
Br. J. Nutr.
巻: 109 ページ: 印刷中
Tocotrienols: Vitamin E Beyond Tocopherols
巻: Second edition ページ: 279-289
巻: 13 ページ: 337-344
doi: 10.1007/s10522-012-9378-3
Natural Product Commun.
巻: 7 ページ: 1501-1506
http://www.life.osaka-cu.ac.jp/report/rep10.html
http://www.life.osaka-cu.ac.jp/cgi/pro.cgi?4102