研究課題
「研究の目的」インスリン非使用の2型糖尿病患者におけるカーボカウント食事療法の有効性を、従来のカロリー制限食を対象として、非盲検多施設共同ランダム化並行群間比較試験を行い明らかにする。「最終年度研究計画と成果」平成24年度中に全症例の観察および各施設からのデータ回収が終了した。25年度からデータ解析を開始し、学会発表を行った。現在論文投稿準備中である。「研究成果の内容と意義」本臨床研究の1次エンドポイントは6カ月後の各郡のHbA1cの比較である。カーボ群とカロリー群で6カ月後のHbA1cに有意差は無かったが、食事指導をプロトコール通りに受けた患者のみを対象とした検討では、カロリー群ではHbA1cの有意な低下は無く、カーボ群では有意な低下を認めた。脂質代謝への影響では、カロリー群で中性脂肪の低下を認め、カーボ群ではHDLコレステロールの有意な上昇を認めた。LDLの上昇は両郡で認められなかった。また、両郡で有意な体重増加も認めなかった。我々は更に両食事療法の心理的影響についても検討した。試験期間の6か月間、食事療法を繰り返すことにより、両郡で食事療法への満足度が改善したが、糖尿病に対する負担感情はカーボ群でのみ改善した。以上のことから、カーボカウント食事療法は、従来のカロリー制限食事療法と比べ、血糖管理に関して少なくとも同等に有効であると考えられ、患者の食事療法に対する負担も軽減する可能性があることを示すことができた。また、カーボカウント食事療法に危惧された副作用である体重増加や脂質異常症の悪化等を認めないことが示され、この研究によってはじめて、カーボカウントの有効性と安全性が示されたといえる。現在、糖尿病の食事療法としてはカロリー制限食のみが推奨されているが、今後個人に合わせた食事療法の選択枝が増えることが期待される。
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月刊糖尿病
巻: 5(5) ページ: 82-89