研究課題
慢性腎臓病(CKD)の末期に導入される血液透析患者の死因の約40%は、高リン血症がもたらす心血管疾患によるものである。さらに血液透析時には半数の患者で、既に血管の異所性石灰化の進行がみられることが明らかになっており、早い段階でのリンの栄養管理が重要となってきた。本研究では、骨と血管の臓器相関から見た異所性石灰化の分子基盤を明らかにし、これら分子基盤に基づいたCKDのリン栄養療法の開発を目指す。破骨細胞への分化有無におけるDNAマイクロアレイの結果から、リンチャネルの候補分子として2つに絞って検討を行った。候補分子Aは、分化に伴って約20倍の遺伝子発現増加を示すが、WB、免疫染色による細胞内局在の検討では、分化の有無に関わらず発現は細胞質に限局していた。さらにその発現は、細胞外リン濃度の変化並びに骨添加によっても影響を受けなかったことから、目的とする分子ではないと考えられた。候補分子Bは分化後に3~4倍の発現増加を示し、WB解析により細胞質、細胞膜での発現を認め、リン濃度の変化により発現が上昇した。また、骨添加により発現量が増加したことから、破骨細胞においてリン代謝に関わる可能性が考えられた。リン調節ホルモンFGF23、Klotho,FGF23+Klotho,PTH添加による発現の明らかな変化は認められなかった。血管石灰化との関連を明らかにするために、正常ヒト大動脈平滑筋細胞にリンを添加して石灰化を誘導させた石灰化細胞と、非石灰化細胞による発現を検討した。その結果、石灰化細胞において候補分子Bの遺伝子発現の上昇が認められた。タンパク質発現並びに経時的変化など継続して検討を行っている。今後も骨・血管・腎におけるリン代謝の臓器相関を明らかにし、異所性石灰化のメカニズムを解明することはCKD早期からの異所性石灰化の抑制や新たな治療薬のターゲットの開発につながると考えている。
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