研究課題/領域番号 |
23617020
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
四童子 好廣 長崎県立大学, 看護栄養学部, 教授 (00111518)
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キーワード | autophagy flux / Rab7 / autolysosome / geranylgeranoic acid / UPR / XBP1 splicing |
研究概要 |
本研究計画は、非環式レチノイドの1つであるゲラニルゲラノイン酸(GGA)による肝癌予防における肝癌細胞の細胞死誘導のメカニズムを細胞及び分子レベルで解析しようとするものである。初年度の平成23年度にはオートファジー解析用肝癌細胞の作製に重点を置き、HuH-7/GFP-LC3細胞とHuH-7/RFP-GFP-LC3細胞を作製した。平成24年度は、当初の予定通りこれらの細胞を用いてGGAによるオートファジーの開始シグナルに焦点を当てて解析した。その結果、ヒト肝癌細胞であるHuH-7細胞をGGA処理すると、15分以内にミトコンドリアにおけるスーパーオキサイドの産生亢進と、小胞体におけるXBP1mRNAのsplicingが起こること(いわゆる小胞体ストレスに対するunfolded protein response:UPR)を見いだした。これらGGAにより速やかに惹起された酸化的ストレスと小体ストレスに対する応答として、LC3のlipidationやGFP-punctaの形成などが観察され、オートファゴソームの蓄積がもたらされるものと推定された。 オートファジーの阻害剤としてよく知られているWormaninn (PI3K阻害剤)でHuH-7細胞を前処理すると、GGA処理してもLC3のlipidationやGFP-LC3のpunctaの蓄積は観察されず、GGAによるオートファゴソームの蓄積は抑制された。さらに、ミトコンドリアにおけるスーパーオキサイドのGGA処理による産生亢進も抑制された。ところが、GGAによるXBP1のsplicingの誘導は、Wortmaninn前処理によっても何ら影響を受けなかったことから、GGAはミトコンドリアを介した酸化的ストレスを介してではなく、直接的に小胞体ストレスを起こしている可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、GGAによるオートファジーの開始シグナルの解析に焦点をしぼって解析する計画で申請したが、ミトコンドリアにおけるスーパーオキシド産生の亢進を確認すると共に、申請書には記載していなかったXBP1のスプライシングがGGA処理後15分で誘導されることを新たに見いだした。この点は細胞内におけるGGAの作用点を考える上で申請書に記載した計画以上の収穫であり、オートファジー開始の分子メカニズムをより詳細に理解できる可能性が示された。しかし、当初計画していたRabファミリー蛋白の発現や細胞内局在の研究はWestern Blotと免疫蛍光染色による解析にとどまり、オートファジーとの関係を見いだすことができなかった。この点については、当初の計画通りHuH-7/RFP-Rab7細胞を作製し、GGA処理後のRab7蛋白の動きをリアルタイムに追跡すると共に、オートファゴソームとの位置関係を明確にするつもりである。 以上のことから、所期の研究計画を大幅に変更することなく、さらに新しい視点も加えて、最終年度を迎えたので、順調に研究計画を消化しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に申請しているにもかかわらず未遂行であるミトコンドリア標識細胞クローンとHuH-7/RFP-Rab7細胞クローンを作製し、これらを使って、GGA処理によるmitophagyの可能性の検討やミトコンドリアがGGA処理後、核周辺に凝集することの意義について明確にするつもりである。特に、今年度は本研究の最終年度であり、GGAにより誘導されるオートファジーの最終段階であるリソソームとの融合の障害のメカニズムについてRab7と相互作用するタンパク質の探索を行い、GGAによるオートファジー全体に与える影響を総括する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究計画は2種類の細胞クローンの作製から始まるので、これらの作製に必要なplasmid DNAの入手やsiRNAなどの合成、western blottingのための抗体、RT-qPCRのための酵素やプライマーの作製、共焦点蛍光顕微鏡画像の3D画像解析ソフトの購入などに研究費を使用する予定である。その他、研究成果の学会発表のための旅費や論文投稿の際の経費(native checkや投稿料)、最終年度であるために必要な報告書作成のための費用なども使用予定である。
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