研究課題/領域番号 |
23617023
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
鈴木 敏和 和洋女子大学, 生活科学系, 准教授 (70270527)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 雄性不妊 / 肥満 / 高脂肪食 / 遺伝子解析 |
研究概要 |
今年度は、高脂肪食(60%エネルギーが脂肪由来)投与が及ぼすマウス雄性不妊への影響と、肥満に効果があるとされる一栄養成分が不妊を解消させる能力があるか検証した。5週齢雄マウスを標準食(10%エネルギーが脂肪由来)、高脂肪食で25週間飼育した。また、高脂肪食投与マウスのうち、半数を18週齢より、抗肥満効果を示す一栄養成分(成分A)を同時に投与した。飼育終了後、雌マウスとの交配により、妊娠させる能力を調査した。また、安楽死させた後、マウスより精巣及び精巣上体を摘出し、造成された精子の質や精巣の遺伝子発現を調査した。 高脂肪食投与群の体重は、標準食投与群の約1.6倍であった。成分Aを投与した高脂肪食群の体重は、高脂肪食投与マウスの約95%(p<0.05)であった。高脂肪食投与は、血清グルコース値およびコレステロール値を上昇させた。成分Aの投与は、両値を改善させた(p<0.01)が、標準食のレベルまでは低下させなかった。標準食投与雄マウスの妊娠させる能力は100%(5/5)であったが、高脂肪食投与群では、0%(0/5)であった。成分A投与群は20%(1/5)であった。一腹あたりの胎児数は標準食投与群と同じであった。妊娠させる能力のある成分A投与マウスは、他の同群のマウスよりも(内臓脂肪/体重)比がやや小さめで、且つ肝臓重量も小さかった。 前進運動する精子の割合は、高脂肪食投与によって50%低下した。成分Aの投与による有意な改善は見られなかった。妊娠させる能力を持った成分A投与マウスの前進運動精子の割合は、同じ群の平均値に近い値であった。 精巣より抽出したRNAサンプルを用いて、遺伝子マイクロアレイを行ったところ、高脂肪食投与で変動する遺伝子のうち、一部の遺伝子が成分A投与により、標準食と同様のレベルに戻ることが示された。詳細な解析は現在進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2011年3月に生じた東日本大震災により、計画停電の可能性が7月まで続いた。本研究は実験動物を使用すること、本学の実験動物施設は地下1階にあることから、空調設備の運転の支障がなくなるまで開始を控えた。そのため、実験動物の飼育開始が、当初予定していた時期より3か月遅れた、8月中旬からとなった。第一ステップとなる実験動物飼育は6か月の期間を要した。したがって、交配・妊娠の評価の時期が2月下旬から3月上旬と時期が繰り下げになった。次年度計画への影響が最小限となるよう、努力している。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子マイクロアレイの実験データを得たので、解析・評価を行う。別個体の凍結保存した精巣よりRNAを抽出し、定量RT-PCR法などにより、遺伝子発現の再現性確認を行う。遺伝子発現解析の結果をもとに、培養細胞系を用いた評価系を構築する。精原細胞を用いて、精子形成に関わる遺伝子発現や、セルトリ細胞を用いた精子形成に必要な情報伝達分子や接着分子の発現に及ぼす脂肪酸の影響について調べる。高脂肪食投与時に、抗肥満効果を示す成分Aの投与により、通常食と同じレベルに戻った遺伝子と戻らなかった遺伝子がある。成分Aは、生殖能力の改善効果が見られない、または低かった。高脂肪食投与により発現量が変動し、かつ成分Aの投与により戻らなかった遺伝子を解析の候補とする。 マイクロRNA解析の委託分析依頼を3月末に行った。現在、分析結果の到着待っている。マイクロRNAについても、上記と同様の実験を行う。脂肪酸により変動する造精子に関わる遺伝子のうち上流に位置する遺伝子、およびマイクロRNAを標的としたsiRNAを作成してノックダウン解析を行う。標的遺伝子の発現抑制が脂肪酸投与と同様の造精子に関わる遺伝子発現量の変動を引き起こすか確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2011年度中に実施予定だったマイクロRNA委託分析およびRNA定量解析に係る費用の分、交付額よりも使用額が少なかったので、これら費用を2012年度に繰り越して研究に使用する。 2012年度交付予定の研究費は、以下の消耗品費として使用する予定である。1.精原細胞およびセルトリ細胞由来培養細胞を購入する。培養に必要な、培地・血清等の試薬類や、ピペット・シャーレ・チューブ等の消耗器具類を購入する。その他、細胞保存に必要な試薬・器具類を購入する。2.ノックダウン解析に必要なsiRNA類および導入試薬を購入する。ノックダウン確認や標的遺伝子の発現確認に必要な、定量的RT-PCR解析に必要な試薬類・器具類、およびタンパク質発現量確認のための抗体類や検出試薬を購入する。その他、英文校閲等の謝金として使用する。
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