研究課題/領域番号 |
23617023
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研究機関 | 和洋女子大学 |
研究代表者 |
鈴木 敏和 和洋女子大学, 生活科学系, 准教授 (70270527)
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キーワード | 雄性不妊 / 肥満 / 高脂肪食 / 遺伝子解析 |
研究概要 |
今年度は、昨年度の遺伝子マイクロアレイの結果を評価するためのmRNA定量PCR解析(Q-PCR)を中心に行った。標準食、高脂肪食、および高脂肪食+成分Aで25週間飼育したマウス精巣よりRNAを調製し(n=4)、一本鎖cDNAを合成した。アレイ解析で標準食群と高脂肪食群の間で変化が示唆されたが、高脂肪食群と(高脂肪食+成分A)群で変化のない遺伝子のうち、精子形成に関与すると思われる遺伝子15種類についてQ-PCRを行った。その結果、ステロイドホルモン生合成に関わる遺伝子や精子の成熟に関与する遺伝子など3種類の遺伝子で再現性を得た。その他の遺伝子は、偽陽性または組織切除の段階における他組織の混入に伴う人工的な陽性で再現性が無かった。また、 加えて、肥満で発現が変化することが報告されている精子形成関連遺伝子(Pparg、Crem、Sh2b3、Dhh、Igf1、Lepr)についてもQ-PCR解析を行ったが、本実験系においては、いずれの遺伝子の発現も群間において有意な差が認められなかった。 マイクロRNA解析の結果、高脂肪食投与により発現量の低下が予測される1種類のマイクロRNAが見出された。しかし、精子形成に関与が予測される標的遺伝子の候補が見つかっていないため、その先については行っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
精子形成に関わる遺伝子発現に着目して調査したが、遺伝子アレイの結果では多くの精子形成関連遺伝子の発現は、一部のステロイドホルモン合成関連遺伝子や精子成熟遺伝子を除き、高脂肪食投与によって変化しなかった。さらにマイクロアレイのデータのPathway解析の結果、高脂肪食投与によって脂質代謝関連遺伝子(Lpl, Fabp4, Pck1)およびシャペロンタンパク質Hspa12bの発現上昇が確認されたが、これら遺伝子は高脂肪食+成分A投与群では標準食と同じレベルにまで低下していた。昨年度の実験結果より、高脂肪食投与によって精子の運動能は低下したが、高脂肪食投与群マウスでも精子はつくられている。これらの結果を総合して考えると、精子形成の場である精巣に加え、精子の成熟を担う精巣上体においても調査する必要があると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の研究においては、精巣上体は精子運動能を調べるために使用したため、臓器サンプルを保存していない。そこで、もう一度肥満モデルマウスを作成し、精巣および精巣上体サンプルの採取と遺伝子発現解析を行う。さらに、精巣上体培養細胞を用いたin vitro系を用い、脂肪酸処理に伴って精子成熟関連遺伝子の発現が変化するか、およびその上流の情報伝達経路について、阻害剤またはsiRNAを用いたノックダウン解析により調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
2013年度交付予定の研究費は、以下の消耗品費として使用する予定である。 1. 実験動物(マウス)の購入および飼育に必要な飼料等の購入 2. 遺伝子発現定量解析のためのプライマーおよび定量PCR用試薬の購入 3. 情報伝達経路解析のためのタンパク質抗体およびリン酸化体抗体、阻害剤およびノックダウン解析に必要なsiRNAの購入 その他、英文校閲などの謝金として使用を予定している。
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