研究課題/領域番号 |
23617025
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研究機関 | 女子栄養大学 |
研究代表者 |
川端 輝江 女子栄養大学, 栄養学部, 教授 (80190932)
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研究分担者 |
仲井 邦彦 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00291336)
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キーワード | ω3多価不飽和脂肪酸 / 妊産婦栄養 / 出生コホート / 神経行動学的発達 |
研究概要 |
胎児および新生児の成長と発達に対して、ω3系多価不飽和脂肪酸(PUFA)は重要な栄養素の一つと考えられる。本研究の目的は、母親の体内PUFA割合が、胎児および新生児の身体的ならびに神経行動学的な成長と発達に及ぼす影響について、母児の協力を得て出生コホート調査の方法により検証することである。 本研究のフィールドは、環境省が平成23年1月より開始した「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の宮城ユニットセンターと連携したものである。対象者は、魚摂取量が多いと考えられる宮城県南三陸沿岸部在住の妊婦及びその児とした。 平成24年3月末、約350名の母親の登録が完了し、うちおよそ7割の母親の出産が完了した。母親からの血液採取は妊娠中期で1回、分娩時には臍帯血を採取し、赤血球中脂肪酸組成分析を実施した。一部の妊婦に対しては、妊娠中の経日的変化を見る目的で、27週、36週、分娩直後、産後4週について、赤血球中脂肪酸組成分析を実施した。 途中報告ではあるが、現在までの分析で得られた知見は次の通りである。ω3系PUFAおよびω6系PUFAは、いずれも母体血・臍帯血間で有意な正相関を示し、母から児への胎盤を介した移行が重要であることが認められた。母体血PUFAは、妊娠30週から36週にかけて減少傾向がみられ、妊娠後期に母から児への移行が行なわれている可能性が示唆された。 来年度、血液中PUFA分析を継続すると共に、児の神経行動学的な発達を新生児行動学的評価及び新版K式発達検査により実施する予定である。妊娠期におけるPUFAの栄養学的な意義を明確にできれば、妊婦の魚介類摂取についての指導に研究結果を反映させることが可能と考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
対象地区が宮城県沿岸部であり、一昨年3月の東日本大震災によりコホートへの対象者登録開始が約半年間遅れた。しかし、震災以降の困難な状況の中、我々は出生コホートの確立を完了させ、赤血球中PUFA分析方法の精度管理も実施した。登録開始以降、予定してきた研究はおおむね順調に進み、平成24年3月末、約350名の母体血の分析が完了し、うちおよそ7割の母親については出産が完了した。現在も登録数は増えていることから、サンプルサイズ500の目標達成は可能と考えている。 母体血及び臍帯血は、採取後速やかに調査医療機関から女子栄養大学に送付され、その血液は過酸化等を避けるため、冷凍保存せず直ちにガスクロマトグラフィーによって分析を実施している。そのため、未分析の検体を抱えることなく、順調に分析を進めているところである。 調査地域では、児の成長と発達を、新生児行動学的評価及び新版K式発達検査によって進めつつあり、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目標とするサンプルサイズは500検体であり、来年度も継続して、妊婦の新規登録、母体血のPUFA分析を継続する。また、母体血は妊娠中期に1回のみ採取していることから、一部の妊婦に対しては、妊娠期間中あるいは出産後の赤血球脂肪酸割合の経日的変化を調べるために、健診時に得られた血液を用いて、同一対象者に対して繰り返し赤血球脂肪酸分析を実施する。 児の身体的な成長は、出生体重、身長、頭囲、ponderal indexなどから評価する。神経行動学的な発達は、生後3日目に実施するブラゼルトン新生児行動評価および生後7ヶ月においてベイリー式発達検査により測定する。 平成25年度は、本研究の最終年度に当たることから、児の成長と発達に対して、母親の赤血球中不飽和脂肪酸組成からのω3系不飽和脂肪酸摂取の推定、児への移行との比較を、交絡要因を考慮して多変量解析の手法により解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
母体血及び臍帯血のPUFA分析ならびに神経行動学的検査に必要な消耗品・人件費、研究打ち合わせのための交通・宿泊費、血液運搬費等の項目について使用予定である。
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