研究概要 |
中枢性神経疾患の統合失調症の診断は、精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-IV-TR)、精神症状の評価は、陽性陰性症状評価尺度(PANSS)などによって行われる。統合失調症は、うつ病に次いで患者数が多く、おおよそ100人に1人が発症する。血清中低分子化合物を定量することにより、統合失調症患者と健常人を判別することができれば、診断・治療効果の指標になることが期待される。 統合失調症の原因は、未だ明らかでないが、グルタミン酸受容体の一つであるNMDA受容体の内因性コ・アゴニストのD-セリンやアンタゴニストでトリプトファン代謝物のキヌレン酸などが、統合失調症との関連性が報告されている。また、統合失調症患者では、酸化ストレスの増加や反応性カルボニル化合物によるカルボニルストレスの関与が報告されている。 我々は、統合失調症に関連すると報告されている血清中34種類の生体分子濃度を、健常人(男性12、女15、年齢26.5±5.69)、統合失調症患者(男性11、女性14、年齢28.2±4.4)で定量した。34種類の生体分子は、アミノ酸、トリプトファン代謝物、遊離脂肪酸等である。定量には、HPLC-蛍光検出法、LC-MS法、HPLC-電気化学検出法により行なった。特に、トリプトファン代謝物では、LC-MS法を用いることで、トリプトファンとトリプトファン代謝物キヌレニンの同時定量に成功した(Ohashi H. et al., International Journal of Tryptophan Research, 6, 1-6, 2013)。各生体分子の血清中濃度により、多変量解析(判別分析)を用いることで、健常人と統合失調症患者を判別することができた。
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