研究課題/領域番号 |
23617032
|
研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
室田 佳恵子 近畿大学, 理工学部, 講師 (40294681)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | リンパ輸送 / フラボノイド / プロビタミンA / Caco-2 / CD36 / カイロミクロン |
研究概要 |
リンパカニュレーションラットの十二指腸に大豆油とともに投与したケルセチンの代謝物は、リンパ液中でカイロミクロンには局在していないことを示唆する結果を既に得ていた。今年度はn数を増やして検討し、ケルセチン代謝物はカイロミクロン画分およびカイロミクロン除去液のいずれにも均等に分配していることを明らかにした(論文投稿中)。そこでヒトがタマネギから摂取したケルセチンのヒト血中カイロミクロン画分局在を確認するためタマネギソテーのヒト摂食試験を行い、血漿ケルセチン代謝物濃度について現在解析中である。疎水性食事成分の代表としてビタミンEについても検討する計画であったが、これを変更し、疎水性強度の異なる類似分子が多数存在するカロテノイドを用いたラットリンパ輸送比較実験を行った。代表的なプロビタミンAであるβ-カロテンの場合、十二指腸投与後にβ-カロテンはリンパ液、末梢血液いずれにおいても検出限界以下であったが、代謝物であるレチニルエステルが双方から検出された。一方、含酸素キサントフィルのプロビタミンAであるβ-クリプトキサンチンを投与すると、未代謝のカロテノイドおよびレチニルエステルがリンパ液から検出されたものの、末梢血からはいずれも検出されなかった。このことから、小腸上皮でのプロビタミンAの代謝後、生じるレチノイドのリンパあるいは門脈への輸送は親化合物によって異なっている可能性が示された。またカイロミクロンアセンブリをより詳細に解析する培養細胞モデルを確立するため、CD36遺伝子を導入したCaco-2細胞について脂質代謝に関する形質の変化を検討した。その結果、CD36発現細胞へのトリグリセリド蓄積量が顕著に増加したものの、基底膜側へのトリグリセリド分泌量の増加は非常に小さかった。CD36の発現増強が弱すぎた可能性もあり、より発現量が増加した細胞株の構築を行い、その性質を現在検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リンパカニュレーションラットを用いた実験においては、申請当初とは異なる食品成分を用いているものの、研究目的であるリンパ輸送および門脈輸送の比較を行うために必要な計画変更であった。その点を踏まえ、動物実験および細胞実験のいずれも計画通りの進行をしているといえる。また、3年目に行う予定であったヒト試験についても前倒しで開始することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
リンパカニュレーションラット実験:ケルセチンのリンパ液中ならびに末梢血中代謝物の構造を分析し、輸送経路と代謝物構造の関連を検討する。また、ケルセチンのアグリコンおよび配糖体についての比較やメチル化フラボノイドであるヘスペリチンの投与実験を行い、リンパ輸送と血液輸送の割合について比較する。カロテイノドについては、n数を増やして再現性の確認を行うとともに、小腸上皮での酵素的代謝が量的な律速となっている可能性を検討する。また、プロビタミンA以外のカロテノイドについてもリンパおよび門脈輸送の比率を検討する。Caco-2細胞実験:CD36導入細胞について引き続き脂質代謝の性質を明らかにしていく。細胞へ与える脂質ミセルの組成を変えた条件での取り込み実験を行い、特に刷子縁膜輸送(細胞取り込み)、カイロミクロンアセンブリのそれぞれについて標識脂肪酸等を用いて詳細な検討を行う。種々の条件下においてもカイロミクロン分泌が促進されない場合には、CD36以外の脂質代謝遺伝子の発現増強等を検討していく。ヒト試験:タマネギソテー摂取後のヒト血漿フラボノイド代謝物のリポタンパク画分への分布について解析を行う。動物実験の結果より、ケルセチン以外のフラボノイドについてもヒト試験を行うための摂食条件について検討していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
物品費(900,000円):実験用消耗品費として使用する。旅費(100,000円):国内学会への参加費として使用する。当初海外研究協力者との打ち合わせ渡航費として使用する計画であったが、現在サバティカル中のため、メール等による打ち合わせを行うこととした。人件費・謝金(100,000円):ヒトボランティア試験の謝金として使用する。その他(100,000円):論文作成時の英文校閲費等に使用する。
|