研究課題/領域番号 |
23617035
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
柳原 延章 産業医科大学, 医学部, 教授 (80140896)
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キーワード | 植物性フラボノイド / カテコールアミン / 生合成 / 分泌 / 蜜柑果皮成分 / 抗ストレス作用 / チロシン水酸化酵素 / リン酸化 |
研究概要 |
本年度の研究計画として、蜜柑果皮成分ノビレチンやイカリソウなどの植物由来のフラボノイドによるカテコールアミン(CA) 神経機能への影響について検討することであった。 その結果として、培養ウシ副腎髄質細胞においてノビレチンは、それ自身でCA生合成を濃度依存的(1-100 microM)及び時間依存的(10-30分)に促進した。このノビレチンのCA生合成やその律速酵素のチロシン水酸化酵素活性の促進効果は、外液Ca2+を除去すると見られなくなり、またcAMP依存性プロテインキナーゼやCa2+/calmodulin依存性プロテインキナーゼII (CaM kinase II)の阻害剤 (H-89及びKN-93)で一部抑制された。さらに、ノビレチンはチロシン水酸化酵素のセリン残基(Ser19とSer40)のリン酸化を促進した。一方、ノビレチンはACh刺激によるCA生合成及びチロシン水酸化酵素活性を抑制した。以上の結果より、植物性フラボノイドであるノビレチンはそれ自身では、CA生合成を促進するが、ストレスなどにより引き起こされるACh刺激のCA生合成に対しては抑制することが判明した。ノビレチンのCA生合成促進作用は、cAMP依存性プロテインキナーゼやCaM kinase IIの活性化によるチロシン水酸化酵素のSer19とSer40のリン酸化を介するものと思われた。一方、ノビレチンはノルアドレナリントランスポーター活性を2相性(低濃度で活性化し、高濃度で抑制)に調節していることも明らかにした。 これらの結果を、第10回国際カテコールアミンシンポジウム(Pacific Grove, California、2012年9月)及び第86回日本薬理学会年会等(福岡、2013年3月)にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画に対して、ほぼ計画に沿って遂行された。当初の計画では、植物性フラボノイドのノビレチンのカテコールアミン生合成、分泌や再取り込みに対する反応を調べることであった。上記で述べたようにこれらの植物性フラボノイドがカテコールアミン生合成に対して単独の効果としては細胞内のcAMP依存性プロテインキナーゼやCaM kinase IIを介してチロシン水酸化酵素のSer19とSer40のリン酸化を促進作用し、その結果、チロシン水酸化酵素の活性化が起こることを証明した。また、アセチルコリンの刺激反応に対してはカテコールアミン生合成やチロシン水酸化酵素を抑性する作用が判明した。さらに、ノルアドレナリントランスポーターに対しても2相性(低濃度で活性化し、高濃度で抑制)に調節していることを明らかにした。 今回の結果は、ストレスや精神的興奮により生ずるアセチルコリンを介するカテコールアミン生合成や分泌に対して抑制作用を示すことから、これら食品成分に抗ストレス効果の可能性を示唆した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として、植物性フラボノイドでイカリソウの4つの成分であるikarisoside A、icarin、epimedicin C、 epimedicin Aやその糖鎖が切れたアグリコン等を用いてカテコールアミン生合成や分泌の研究を行う計画である。また前年度に調べた植物性フラボノイドが、実際にin vivo実験において生体内でのカテコールアミン動態にどのように影響するか、また種々のストレスに対して抗ストレス効果を示すかどうかなどを調べる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
収支報告書の次年度使用額(繰越額)が約1.9万円となったのは、当初計画していた実験動物の購入が予定より少なかったためと思われる。 次年度研究費の使用計画としては、細胞培養関係、細胞内シグナル用キット、放射性標識化合物などの消耗品に15万円、細胞膜エストロゲン受容体の分子生物学的研究用試薬などに20万円、国際生理学会(バーミンガム、英国)及び日本薬理学会年会(仙台)の発表などの旅費として50万円、人件費及び謝金に30万円、その他費(実験動物関係)に16万円を計上したい。
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