研究課題/領域番号 |
23617036
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研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
豊平 由美子 産業医科大学, 医学部, 講師 (90269051)
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キーワード | フィトケミカル / ノルアドレナリントランスポーター / セロトニントランスポーター / レスベラトロール |
研究概要 |
本課題はストレス軽減効果のある予防薬や気分障害の治療薬としての可能性が想定できる化学物質を植物由来の化学物質であるフィトケミカルの中から同定し、選定したフィトケミカルの神経経への作用を評価する基礎研究である。ブドウの葉、果皮、種子等に存在するスチルベン骨格からなるポリフェノールの1つであるレスベラトロールはSK-N-SH(ヒト神経芽細胞腫)細胞におけるノルアドレナリントランスポーター(NAT)の機能を、低濃度(1~300 nM)では促進し、高濃度(1~100 μM)では抑制した。レスベラトロールによるNAT機能の促進、抑制作用はNATの基質に対するアフィニティ(みかけ上のKm:Michaelis定数値)を変化させるものではなく、最大反応速度(Vmax:最大取り込み能)の変化によるものであった。SK-N-SH細胞を用いた細胞膜ノルアドレナリントランスポーター(NAT)へのニソキセチン(NAT選択的阻害薬)結合実験でのScatchard解析において、レスベラトロール存在下でKd(解離定数)、Bmax(最大結合能)は共に変化しなかった。レスベラトロールの作用は細胞膜上NATの発現には関係しないことが明らかとなった。NAT機能に作用することが明らかとなっている細胞内シグナルとレスベラトロール作用の関係をついて検討したが、いずれも関与しないことが明らかとなった。 ゲニステインと同様に、レスベラトロールはNAT機能を二相性に修飾していることが明らかとなったが、そのNAT機能修飾はゲニステインによる機能調節とは異なる機序による可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の研究計画において、フィトケミカルのゲニステインやレスベラトロールがモノアミントランスポーターに及ぼす作用の培養細胞を用いた用いた系での作用機序の解析に関しては概ね順調に遂行された。しかしながら、実験動物(マウス)を用いた系でのフィトケミカルのゲニステインやレスベラトロールが神経系に及ぼす作用の検討に関しては研究代表者の足の骨折のため動物実験の実施が不可能になった時期があったことと、飼育していたマウスにおいて感染症が発症したので、殺菌のため実験を中断せざるを得ない結果になったことも重なって、やや遅れが出ている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23、24年度に得られた結果を基にして、神経系への影響が確認されたレスベラトロールとゲニステインのモノアミントランスポーターにおける二相性の調節の機序を培養細胞と実験動物を用いた系において解析する。細胞を用いた系ではレスベラトロールとゲニステインの細胞内シグナル伝達系とモノアミントランスポーター機能調節との関連を検討する。実験動物を用いた系では、レスベラトロールとゲニステイン投与マウスを用いて行動薬理学的解析を行い、併せて大脳皮質、海馬、中脳における細胞内シグナル伝達系酵素や神経栄養因子等のタンパク質やmRNAの変動を解析して、効果発現の作用機序検索を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者の足の骨折のため動物実験の実施が不可能になった時期があったことと、飼育していたマウスにおいて感染症が発症し、殺菌のため実験を中断せざるを得ない時期が生じたことも重なって、実験動物(マウス)を用いた系での検討が出来ない期間が生じたため、動物購入・飼育管理費の一部が繰越金となった。平成24年度未使用の金額296,813円については、遅れている動物実験に用いるマウスの購入に追加配分する予定である。分子生物研究用試薬、ウエスタンブロット用試薬、ELISAkキット、放射性標識化合物、、HPLC用試薬等の研究用試薬、研究用器具と実験動物購入費等の物品費に95万円、実験動物管理費と大学所有共同利用機器の使用料等のその他費に35万円、研究代表者と研究協力者の日本薬理学会西南部会(福岡)年会(仙台)での発表のための旅費として30万円を計上する。
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